1)シクロデキストリン-金属ポルフィリン包接錯体結晶の作成 シクロデキストリン-ポルフィリン系の色素包接結晶において、ゲストであるポルフィリンがフリーベース、ニッケル配位に関わらず包接結晶を作成できることを既に見出している。そこで、様々な中心金属を有するポルフィリンについて色素包接結晶の作成を行い、結晶構造に対する影響について検討した。テトラフェニルポルフィリン(TPP)の中心にマンガン(III)、鉄(III)、コバルト(II)、銅(II)、亜鉛(II)を包接したそれぞれについて色素包接錯体結晶を作成し、単X線結晶構造解析を行った。その結果、いずれの金属ポルフィリンにおいても包接結晶が得られることがわかり、また、マンガンポルフィリン、鉄ポルフィリンについてはアキシャル位に塩化物イオンが配位していることや、亜鉛ポルフィリンについては水が配位していることが明らかになった。この軸配位子は母溶媒に塩を添加することで比較的容易に交換可能であり、いずれの結晶構造もフリーベースポルフィリンやニッケルポルフィリンとほとんど格子定数が変わらないことがわかった。また、色素包接錯体結晶中の孤立色素は直線偏光発光性を有し、さらに構造が安定化されることでより安定なエネルギー準位からの発光が促進されることを見出した。 2)異なる色素分子をゲストとした色素包接錯体のヘテロ接合型結晶の作成 シクロデキストリン-ポルフィリン系の色素包接結晶において、ゲストであるポルフィリンの構造を変えても全体の格子構造にほとんど影響を及ぼさないため、逐次成長によって同一結晶中で途中から中心金属の異なるヘテロ接合型包接錯体結晶が得られることが判った。色素包接結晶やヘテロ接合型色素包接結晶の物性について有機電気デバイス特性の検討を行ったが、絶縁性であることがわかった。
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