研究課題/領域番号 |
24750145
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
井出 裕介 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (40449327)
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キーワード | 光触媒 / CO2吸着材 / 分子認識 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、CO2吸着材を設置した光触媒反応を調査した。TiO2によるフェノールの分解,Au微粒子担持CeO2(Au@CeO2)によるギ酸の分解など,水質汚染有機物のCO2への完全酸化を,太陽光照射下,密閉反応容器の気相にCO2吸着材を設置して行うと,分解速度が加速した。加速効果の機構は不明ではあるが,分解速度が吸着材の設置量やCO2吸着容量に依存したことから,吸着材によって気相CO2が減少し,CO2の溶解平衡を保つために水中からのCO2の発生が促進されたことが一因であると考えた。 そこで,さらに高い加速効果を得るために,より高機能な新規CO2吸着材を合成した。層状ケイ酸塩マガディアイトをアミノプロピルシラン,オクタデシルシランと反応させることで,同一層間にアミノ基とオクタデシル基が固定された誘導体が得られた。同材料は,大量のN2およびH2Oを含む混合ガスから低濃度のCO2を効率的かつ選択的に吸着する材料えあり,Au@CeO2による水中のギ酸の分解に用いると,触媒だけを用いた場合に比べ分解速度は加速し,期待通り,既存のCO2吸着材を設置した場合に比べ高い分解速度が得られた。注目すべきことに,吸着材を用いずに反応容器を開放して行った場合に比べ,分解速度が相当早く,気相中のCO2を吸着材によって効率的に(作為的に)除去する本手法のメリットが示された。 さらに新たな反応環境も開発した。フェノールを迅速,効率的かつ選択的に吸着できる層状ケイ酸塩,H+交換型マガディアイトを太陽光照射下でのTiO2による水中のベンゼンの酸化に供したところ,反応後吸着材にはフェノールのみがトラップされ,吸着材をエタノール水溶液で洗浄するだけで,非常に高い収率(回収量),選択率(純度)でフェノールを回収できた。層状ケイ酸塩を添加するだけで、TiO2による効率的かつグリーンな有機合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初提案した2種類の反応環境の他に、新たな有用反応環境を1種類提案できた。
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今後の研究の推進方策 |
CO2雰囲気下での部分酸化、CO2吸着材を設置した完全酸化に関して、様々な学会で発表し、機構に対する解釈を深め、研究を発展させる。 新たに発見した反応環境については、活性の最適化、汎用性の確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品に関しては予定通り購入し、期待以上の研究成果が得られた(主に論文、特許)。成果発表のために計上していた旅費等に関しては、重要な成果発表の場と考えられる学会等が事業期間末期および事業期間後に開催されるため、未使用額が生じた。 本課題に関連したテーマで、既に2件の招待・依頼講演が決定、内定している。また本課題を発展させるのに有効な成果発表の場となる学会もいくつか開催される。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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