研究課題/領域番号 |
24750151
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山口 大造 津山工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60470118)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高機能触媒 / ナノ酸化鉄粒子 / カーボン複合材料 |
研究概要 |
本研究は、炭素複合体の合成条件依存性およびこれによる酸触媒活性の変化について明らかにすることを目的とした。平成24年度は金属塩水溶液濃度を変化させて(1.25~15.0 g L-1の5条件)炭素複合体を合成し物質のキャラクタリゼーション(SEM, TEM, N2吸着, XRD, Raman, XPS, Mossbauer, FT-IR, 13C-NMR, NH3-TPD, 元素分析)、磁化特性分析(VSM)を行い詳細に調査検討した。また、これら炭素複合体の酸触媒化(スルホ化)を一定条件下で行い、セルロースの加水分解反応をモデル反応とした酸触媒活性の評価、経時変化分析を行った。 その結果、炭素複合体は、5nm程度のメソ孔を有するアモルファスカーボン中に10nm以下のγ-Fe2O3粒子が分散した材料であり、酸化鉄粒子径は、金属塩水溶液の濃度を濃くするに従って小さくなることが分かった。この複合体をスルホ化することにより材料表面に存在するγ-Fe2O3粒子はFe2(SO4)3へと変化し、1nm程度のグラフェンシートに結合したスルホ基、カルボキシル基、水酸基と共に酸点となっていることが分かった。NH3-TPD分析により、これらの酸強度は既存のカーボン固体酸より強く、酸点は最大で8倍(10 g L-1の条件)となった。飽和磁化は、金属塩水溶液の濃度を濃くするに従って大きくなった。複合体と触媒の飽和磁化は検討前の基準に比べそれぞれ最大で3倍と1.5倍となり、次年度以降の目標値の1.2倍を前倒しで達成した。また、セルロースのグルコースへの加水分解反応における活性は、既存のカーボン固体酸の1.5倍(1.25 g L-1の条件)となった。以上の結果から、炭素複合材料の合成条件を最適化出来た。本研究は研究期間を合計2年以上と考えていたが、予定を大幅に上回るスピードで結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画(3年間)における検討課題は大きく分類すると次の3項目である。①金属塩水溶液濃度、金属塩種を変化させて炭素複合体を合成し物質のキャラクタリゼーション(SEM, TEM, N2吸着, XRD, Raman, XPS, Mossbauer, FT-IR, 13C-NMR, NH3-TPD, 元素分析)、磁化特性分析を行い詳細に調査検討する。②これら炭素複合体の酸触媒化を一定条件下で行い、セルロースの加水分解反応をモデル反応とした酸触媒活性の評価を行い、実用化可能性検討を行う。③磁化の増大を狙いニッケルの導入を試みる。 平成24年度中に得られた成果から、①の課題検討は完了した。また、②の課題検討は約80%完了しており、今後は、触媒反応条件の詳細な検討(最適化)および③の課題を実施していく。以上のことから、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画における今後の検討課題は大きく分類すると下の二つである。また、①の課題検討は平成24年度中に約80%完了しており、今後は、触媒反応条件の詳細な検討(最適化)および②の課題を実施していく。 ①これら炭素複合体の酸触媒化を一定条件下で行い、セルロースの加水分解反応をモデル反応とした酸触媒活性の評価を行い、実用化可能性検討を行う(反応時間と温度を一定とし(3 h、120℃)、触媒量(0.1~0.5 g)、水量(0.1~0.5 ml)およびセルロース量(0.1~0.5 g)を変化させて、最適条件を求め、その条件において経時変化を調査する)。 ③磁化の増大を狙いニッケルの導入(炭素複合体を合成する過程において、ニッケル水和物を混合させることにより、炭素中に酸化ニッケルもしくは酸化鉄/酸化ニッケルを導入すること)を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
【平成25年度】 ・触媒活性評価における反応条件の最適化実験実施のため、また、炭素中に酸化ニッケルもしくは酸化鉄/酸化ニッケルを導入することを試みるための試薬・材料費、HPLC分析用薬品購入費、顕微鏡購入費、学会参加費、その旅費に使用する予定である。 【平成26年度】 ・炭素中にニッケルを導入することを試みた物質のキャラクタリゼーション(依頼分析費:TEM, XRD, XPS, NH3-TPD, 元素分析など)、消耗品(試薬等)の購入費、学会参加費、その旅費に使用する予定である。
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