研究課題/領域番号 |
24750153
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
上田 太郎 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (10524928)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | NOxセンサ / ペロブスカイト / YSZ |
研究概要 |
La系ペロブスカイト型酸化物を検知極に用いた電流検出型センサの研究を行っており、本年度はセンサ応答メカニズムを検討するための電極作製技術について研究を推進した。本センサのガス反応場としては①LSM/YSZ/ガスの三相界面と、②LSM/ガスの二相界面を想定している。①は燃料電池の酸素還元電極の反応場と考えられているため、NOxセンサ応答に作動条件を最適化した場合でも一定の酸素還元反応が併発している可能性があると考えている。そこで、三相界面へのガス拡散を抑制可能な緻密電極が作製できれば、②のみでガス反応を生じることのできる電極作製が可能なため、実際のガス反応場の検討ができるし、高感度選択的NOx応答を得るための電極構造の知見を得ることができる。 緻密電極作製のためにLa0.8Sr0.2MnO3の原料金属を含む硝酸塩および酢酸塩を2-メトキシエタノールに溶解したコーティング溶液を作製した。スピンコーターを用いてYSZペレットに成膜後焼成することで検知極とした。この断面SEM観察の結果、500nm程度の厚みを持つ緻密電極が作製できた。この素子のNO2に対するセンサ応答特性を評価したところ、O2に対する応答電流値は従来の素子(スクリーン印刷使用)と比較して、約1/2となる結果を得た。緻密化による三相界面の反応場低減の結果であると考察できる。 O2に対する応答性をより低減するためにコーティグ溶液の改良に取り組んだ。先ほどのコーティング溶液は黒色をしているため構成元素が凝集しており分散性が不十分であることが考えられる。そこで、安定化材について検討した。エタノールアミンとアセトインを2:1の割合でMnに対して0.25モル等量加えることで透明溶液を作製できることを見いだした。この溶液は一月経過後も沈殿の発生や溶液色に変化は見られず非常に安定に存在できることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の噴霧熱分解法で作製したLa0.8Sr0.2MnO3粉末をスクリーン印刷する場合と比較して、薄く、緻密な電極が作製できた。この電極を用いたセンサ素子の応答電流値を測定し従来品と比較したところ、O2に対する応答電流値を半減することに成功した。コーティング溶液の作製方法を工夫することで、さらに緻密膜の形成も可能なコーティング溶液の改良に関する知見が得られており、研究は概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
自動車排ガスセンサの実用化を考える場合には、高温還元雰囲気となる排ガスに暴露されても安定に存在できる材料の検討が必要となる。そこで来年度は本年度の検討に加えて、化学的安定性に優れる電極材料の開発を行う。具体的にはLa-Al系ペロブスカイト型酸化物に着目し、高温還元雰囲気下での安定性評価とこれらを検知極としたセンサ素子のNOx応答特性を評価する。噴霧熱分解法を用いてLa0.8Sr0.2AlO3(x=0, 0.2, 0.4)の合成ができること、高温還元雰囲気下で安定に存在できる材料であり、NO2に選択的に応答することは確認済みである。ところが、NO2への応答性の低いことが難点となっている。そこで、Alの更なるMnでの部分置換とセンサ作製条件の最適化検討を行うことでより大きなNO2応答を示すセンサ素子を開発する。また、本研究を通して得られた知見を元に新規センサ(炭化水素、臭い成分など)開発の可能性について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
検知極材料である酸化物合成に必要な試薬、センサ素子作製に必要な貴金属や基材、センサ応答特性評価に必要なガス購入を行う。また、研究動向についての調査研究、研究成果の外部への積極的な発信のための旅費としての使用を計画している。
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