研究課題/領域番号 |
24750156
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
高橋 俊太郎 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (40456257)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 翻訳 / 翻訳終結 / 遺伝子 / リボソーム / 水晶発振子 / リアルタイム測定 |
研究概要 |
本研究の目的は、水晶発振子を用いた質量変化の微量測定を行うことで、種々のタンパク質生合成をリアルタイム測定し、mRNA がコードする新生ポリペプチド鎖依存的な翻訳の異常終結およびその解消メカニズムを解明することである。そのために先ず、一連の翻訳反応のリアルタイム測定と翻訳終結過程の観察法を確立した。用いた遺伝子としてN末端側にStreptavidin binding peptide(SBP)、ラムダファージ由来のProteinD、および終止コドンUAGを連結したものを作製した。この反応を終結因子RF1 を除いた無細胞系で満たした Streptavidin 固定化QCMセル内で行ったところ、リボソーム複合体が生成し、基板上に結合するため振動数減少が観察された(質量増加)。その後合成が終了し、振動数が一定になったところで RF1 を添加すると、tRNA から切り離されたポリペプチド鎖が基板上に残り、巨大なリボソームが解離したことによる振動数増加(質量減少)が観察された。 続いて、ProteinDの代わりにいくつかの天然、非天然の遺伝子を連結し同様の実験を行ったところ、RF1添加による振動数増加量が翻訳された遺伝子によって異なることが見いだされた。すなわち翻訳の途中で反応が異常に終結したことを意味する、翻訳成功率が遺伝子によって異なることが明らかになった。評価した結果を比較すると、翻訳成功率は翻訳される遺伝子長に応じて減少すること、連続したレアコドンによって減少することが明らかになった。一方で、それだけでは説明がつかない結果も得られており、遺伝子配列依存的な翻訳異常終結への影響も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの若手研究(B)「翻訳中に変化するタンパク質粘弾性のリアルタイム測定」での成果により、翻訳のリアルタイム測定の基盤がすでに確立していたことから、翻訳終結過程の観察へのスムースな展開が実現でき、翻訳の成功率を評価することで、リボソームがある遺伝子上で翻訳を異常終結してしまうことを観察する事に成功した。遺伝子配列による異常終結の傾向もいくつか明らかにすることができ、平成24年度の研究計画通りにほぼ研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、様々な天然の遺伝子配列を用いて翻訳異常終結の遺伝子配列依存性を評価する。また、翻訳を人為的に強制終結させたときの翻訳反応への影響を検討する。具体的に遺伝子配列の任意の箇所に終始コドンUAGを導入する。この遺伝子を翻訳させるとリボソームは終始コドンまで翻訳を進めて、そこで停止する。その際、UAGに対応するサプレッサーtRNAを添加することで翻訳の再開を誘導する。遺伝子末端の終始コドンをUGAにすることで、終結因子RF2が翻訳全体の終結反応を誘導する。これらの段階的反応を水晶発振子上で観察し、人為的な異常終結の影響が与える翻訳速度や翻訳成功率について検討する。具体的な遺伝子としては、ラムダファージ由来のProteinDや、翻訳の速度を低下させるレアコドンを多数含む大腸菌クロラムフェニコール転移酵素IIIを候補として考えている。また、得られる結果から翻訳異常終結のリスクをどのように回避していくかを考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、申請者の研究機関異動があり、研究活動が大幅に減少した。最低限の研究成果はあがったものの、予定していた数多くの遺伝子についての研究は時間の都合上実行できず、計画的な予算執行が難しかった。繰り越した予算については平成25年度において、当初執行予定であった平成24年度計画分の残りの遺伝子作成及び評価用の研究費として用いる計画である。
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