本年度は、H24年度実施報告書の結果に基づき、不糖糖タンパク質AFGPの合成と、結晶構造解析に焦点を合わせ研究を進めた。まず1年目に確立した、ペプチド-グアニジド体を鍵化合物として天然型のAFGPの合成を行った。この結果、Ala-Thr(GalNAc)-Alaの20回繰り返し構造を十分量合成する事に成功した(約4mg)。これについてはさらなるスケールアップも望めたが、結晶化スクリーニングには低容量で実施可能な自動装置を利用するよう計画したためこれで十分量とした。一方、偽-ラセミタンパク質結晶化法を行うために必要な、糖が結合していない、D-アミノ酸で構成されたタンパク質部分の合成も同様の手法にて合成を行った。しかしこの場合、繰り返し構造構築のために必要な構成単位である15残基のD-AFGPユニットは極めて溶解性が悪く、その後の合成に用いる事ができない事がわかった。そこで、溶解性を確保するため天然型のGalNAcを側鎖に有したD-Thr誘導体を別途合成し、これを用いてAFGPのジアステレオマー体の合成を行ったところ、天然型AFGPと同様にD-Ala-D-Thr(GAlNAc)-D-Alaを単位とした、20回繰り返し構造の合成に成功した。この様な大型のAFGPジアステレオマー体の合成は過去に例を見ない初めての合成例である。以上のようにして得た天然型、およびジアステレオマー型のAFGPを1:1の比で混合した、偽-ラセミAFGP溶液を用い結晶化スクリー二ングを開始したが、2014年3月時点で良好な結晶は得られておらず、種々の条件にてスクリーニングを継続中である。これは用いた偽-ラセミAFGP溶液の化学構造の対称性がわるく、ラセミタンパク質結晶化法特有の高い結晶化効果を得ることができなかったためであることを示唆しており、完全なラセミタンパク質誘導体の必要性も見出された。
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