研究課題/領域番号 |
24750163
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
長尾 聡 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (30452535)
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キーワード | 国際情報交換 / 中国 / インド |
研究概要 |
本研究では、光捕集アンテナのような優れた機能をもつ分子の機能発現メカニズムの解明を目標に、光応答性をもつ亜鉛置換シトクロムcの多量体をドメインスワッピング機構で形成し、その多量体の構造-機能相関の理解を目指している。 平成25年度は、(1)亜鉛置換シトクロムc多量体の活性部位構造の解析、(2)X線小角散乱測定による亜鉛置換シトクロムc多量体の溶液構造予測、(3)亜鉛置換シトクロムc多量体の光化学的特性の評価を行った。具体的な成果としては、 (i)FPLCを用いて精製した亜鉛置換シトクロムc二量体と単量体の1H NMR測定より、亜鉛ポルフィリンの軸配位子と考えられているメチオニン80が二量体では外れていることが示唆された。(ii)亜鉛置換シトクロムc二量体、三量体、四量体のX線小角散乱曲線をもとに、GNOMおよびGASBORを用いて溶液中における立体構造予測を行った。その結果、亜鉛置換シトクロムcでは、三量体と四量体のコンフォメーションが無置換のウマシトクロムcとわずかに異なっていたが、溶液中で鎖状構造をとっていることが明らかとなった。(iii)亜鉛置換シトクロムc二量体、三量体、四量体の蛍光スペクトルおよび蛍光寿命測定を行い、単量体と比較したところ、多量体の極大蛍光波長および蛍光強度、蛍光寿命はいずれも単量体と類似していることが明らかとなった。 以上の成果より、亜鉛置換シトクロムcは多量化すると亜鉛ポルフィリン近傍のアミノ酸残基の配置が変化するが、この構造変化が光化学的特性に与える影響は小さいことが明らかとなった。また、亜鉛置換によって、多量化したときの溶液構造がわずかに摂動を受けることが分かった。以上の結果は、光応答性タンパク質の機能発現メカニズムの解明や、光応答性タンパク質多量体の構造制御の手がかりとなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度中に、研究室の大部分の実験空間と装置が使用不可能になるドラフト工事が計画・実施され、予定していた実験や機器購入に遅れが出たため、研究計画を1年間延長した。しかしながら、実験可能だった期間中に、 (1) 亜鉛置換シトクロムc 多量体の活性部位構造の解析、(2)X線小角散乱測定による亜鉛置換シトクロムc多量体の溶液構造予測、(3)亜鉛置換シトクロムcの光化学的特性の評価、などを行い、光応答性タンパク質多量体の構築に重要な知見となる亜鉛置換シトクロムc多量体の活性部位構造、溶液構造、光化学的特性を明らかとし、光応答性タンパク質の構造-機能相関について理解を深めることができた。以上の成果が得られているが、研究計画の延長が必要なことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24、25年度に得られた結果を基にして、平成26年度は、(1)リンカーをヒンジ領域に挿入したシトクロムc変異体の作製と多量体形成、(2)亜鉛置換シトクロムc多量体の光エネルギー移動特性の評価を行う。以上の実験により、金属ポルフィリンの距離・数が異なったシトクロムc多量体の物理化学・構造化学的なパラメータと、蛍光寿命・エネルギー移動速度等の光化学的特性の相関関係について考察する。具体的な実験としては、 (i) 遺伝子工学的手法により、シトクロムc多量体のモノマーユニットを連結しているヒンジ領域にリンカーを挿入した変異体を作製。(ii) 変異型シトクロムcのヘム鉄を亜鉛イオンに置換する。(iii)変異型シトクロムcの多量体を形成させ、野生型と同様に変異体の多量体を構造評価。(iv) 様々な大きさの直鎖状および環状構造のシトクロムc多量体について蛍光スペクトルと蛍光寿命を測定し、多量体の大きさと分子形状が光化学的特性に与える影響を評価。(v) 亜鉛置換シトクロムc多量体の亜鉛ポルフィリン間の光エネルギー移動速度を計測。 等を行う。本研究において得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に研究室の大部分の実験空間と機器が使用不可能になるドラフト工事が計画・実施されたため、予定していた機器や試薬類が購入出来なくなり、研究計画が遅延した。計画を1年間延長して研究を継続し、購入できなかった機器や試薬を次年度にあらためて購入するため次年度使用額が生じた。 上の理由のため、消耗品として、実験を行うために必要なタンパク質(20万円)、タンパク質の金属置換に必要な試薬類(10万円)、精製のためのカラム(25万円)、測定セルなど(5万円)を購入予定である。また旅費として、国内学会への参加費および旅費(10万円)、国際学会への参加費および旅費(25万円)を予定している。
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