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2012 年度 実施状況報告書

脳低温療法における神経幹細胞の膜上糖脂質組成変化解析及び機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 24750164
研究種目

若手研究(B)

研究機関日本大学

研究代表者

鈴木 佑典  日本大学, 理工学部, 助教 (20586755)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード糖脂質 / 神経幹細胞
研究概要

1.マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF/MS)によるシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)の構造解析において、レーザー照射によって容易にシアル酸が脱離してしまう点、および通常得られるナトリウム付加イオンはその後のMS/MS解析において詳細な構造情報を与える断片化イオンが得られない問題点が存在した。そこで、我々は、最適な固体マトリックスの選択および各種金属塩添加濃度を検討した結果、これまで検出することが困難であったガングリオシドGM3のリチウム付加分子関連イオンを検出することが可能であることを確認した。以上の結果から、ナトリウム付加イオンと比較して、リチウム付加イオンはMS/MS解析において詳細な断片化イオンを生じることが知られていることから、本解析法は有用であると考えられた。
2.次に、神経幹細胞株(MEB5)の培養条件とEGF枯渇によるアポトーシス誘導条件の確立を検討した結果、これまでの報告と同様に、EGF枯渇により誘導されるMEB5のアポトーシスが脳低温療法と同じ温度条件(32℃)で抑制されることを確認した。そして、通常条件(37℃, EGF+)で培養したMEB5に発現している糖脂質は大部分がGD3であったが、アポトーシス誘導条件(37℃, EGF-, 48時間培養後)ではGM3, GM1, およびGD1aなどのガングリオシド発現が上昇することを確認した。そして、上記の発現変化は32℃, EGF-, 48時間培養後では、確認されず、大部分発現している糖脂質がGD3であることを確認した。以上の結果から、EGF枯渇によるアポトーシス誘導と糖脂質発現変化には関連性がある可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

まず、これまでに我々が確立したジクロロエタン(DCE)抽出法を応用したキャピラリー電気泳動装置を用いた膜マイクロドメイン画分からの糖脂質の高感度自動分析システムの確立研究に関して検討した。キャピラリーカラムのガラス内壁をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの従来から用いられているガラス表面への試薬の吸着を抑制する条件をDCE抽出法に応用した結果、糖脂質の回収率が上昇する傾向が観察された。しかし、用いているキャピラリー電気泳動装置は共同利用機器であり、1つの条件検討に多大な時間が要する本実験を進めるのは困難であることがわかった。
上記の問題が生じたことから、次にマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF/MS)による糖脂質の構造解析法の確立研究を開始した。シアル酸を有するスフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)の構造解析においては、レーザー照射によって容易にシアル酸が脱離してしまうとともに、通常得られるナトリウム付加イオンは、その後のMS/MS解析において、詳細な構造情報を与える断片化イオンを得にくいという問題点が存在した。そこで、我々は、最適な固体マトリックス、各種金属塩濃度を検討した結果、これまで検出することが困難であったGM3のリチウム付加分子関連イオンを検出することが可能であることを確認した。
そして、神経幹細胞株MEB5の膜マイクロドメイン上のガングリオシド及びタンパク質の発現・組成変化による神経幹細胞の増殖・分化およびアポトーシス制御機構の解明研究を進めた結果、脳低温療法と同様の温度条件では、EGF枯渇によるアポトーシス抑制と同時に糖脂質組成変化も抑制されることを確認した。培養条件の確立とアポトーシス誘導条件を確認することに時間がかかってしまい、膜マイクロドメインの詳細な脂質組成解析は進めることができなかった。

今後の研究の推進方策

1.本研究で確立したガングリオシドGM3のリチウム付加分子関連イオンを検出する条件が、より複雑な構造を有するガングリオシドに応用可能であるかを確認する。全てのガングリオシドの構造解析において最適な条件を確立する。
2.温度および各種増殖因子の濃度を変化させたMEB5細胞からショ糖密度勾配による膜マイクロドメイン画分を分画した後、Western blotにより炎症反応を伴う免疫応答に係るタンパク質および糖脂質の膜マイクロドメイン画分への集積・分散を確認する。また、温度変化により細胞の形態とディッシュへの接着が変化していることから、各種細胞接着因子の発現変化やマイクロドメインマーカーを用いて、膜マイクロドメインの構造変化がどのように起きているのかを解析する。また、温度変化による糖転移酵素発現制御を解明するため、エピジェネティクス解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

各種タンパク質に対する抗体、各種成長因子や培地などの細胞培養関連、Western blot解析、エピジェネティクス解析に係る試薬などの消耗品に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Improved the detection of ganglioside in MALDI-TOF MS

    • 著者名/発表者名
      Akira Okamoto, Yusuke Suzuki, Aya Horie, Keisuke Ishida, Hisashi Kamimiya, Mathew Anila, Yasunori Kushi
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] 脳低温療法における神経幹細胞の糖脂質組成変化解析

    • 著者名/発表者名
      吉田恵里子、鈴木佑典、小島駿一、勝田沙織、上宮 悠、Mathew Anila、櫛 泰典
    • 学会等名
      第56回日本大学理工学部学術講演会
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] MALDI-TOF MS 解析におけるガングリオシドのイオン化条件探索

    • 著者名/発表者名
      岡本 明、鈴木佑典、石田佳佑、堀江亜矢、上宮 悠、マシュー アニラ、櫛 泰典
    • 学会等名
      第56回日本大学理工学部学術講演会
    • 発表場所
      東京

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公開日: 2014-07-24  

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