研究概要 |
1.マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF/MS)によるシアル酸を有するスフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)の構造解析において、レーザー照射によって容易にシアル酸が脱離してしまう点、および通常得られるナトリウム付加イオンはその後のMS/MS解析において詳細な構造情報を与える断片化イオンが得られない問題点が存在した。そこで、我々は、最適な固体マトリックスの選択および各種金属塩添加濃度を検討した結果、これまで検出することが困難であったガングリオシドGM3のリチウム付加分子関連イオンを検出することが可能であることを確認した。以上の結果から、ナトリウム付加イオンと比較して、リチウム付加イオンはMS/MS解析において詳細な断片化イオンを生じることが知られていることから、本解析法は有用であると考えられた。 2.次に、神経幹細胞株(MEB5)の培養条件とEGF枯渇によるアポトーシス誘導条件の確立を検討した結果、これまでの報告と同様に、EGF枯渇により誘導されるMEB5のアポトーシスが脳低温療法と同じ温度条件(32℃)で抑制されることを確認した。そして、通常条件(37℃, EGF+)で培養したMEB5に発現している糖脂質は大部分がGD3であったが、アポトーシス誘導条件(37℃, EGF-, 48時間培養後)ではGM3, GM1, およびGD1aなどのガングリオシド発現が上昇することを確認した。そして、上記の発現変化は32℃, EGF-, 48時間培養後では、確認されず、大部分発現している糖脂質がGD3であることを確認した。以上の結果から、EGF枯渇によるアポトーシス誘導と糖脂質発現変化には関連性がある可能性が示唆された。
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