研究課題/領域番号 |
24750169
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
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キーワード | ヘム酵素 / ヘムオキシゲナーゼ / NMR緩和分散測定 / ヘム代謝 / 国際情報交換 |
研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、シトクロムP450還元酵素(CPR)やビリベルジン還元酵素(BVR)など複数のタンパク質と相互作用し、基質ヘムをビリベルジン、次いでビリルビンへと変換するヘム分解系で働く酵素である。一方、HOはガス状シグナル伝達物質と目される一酸化炭素(CO)を副産物として発生する生体内で唯一の酵素である。本研究課題では、HOに関わる酵素群との相互作用機構、および、COによるシグナル伝達機構を明らかとすることを目的としている。また研究の一環として、新しい手法であるNMR緩和分散測定法が、タンパク質の未知機能探索に有効であることを実証していく。 本年度は、 HOのNMR緩和分散測定よって見出した、本酵素の基質ヘム結合時に特異的に動く(揺らぐ)アミノ酸残基のうち、77番目のLeuの変異体(L77A)が野生型よりも高い酵素活性を示す原因について調べた。その結果、L77Aは反応生成物であるビリベルジンの放出が速くなることで酵素反応のターンノーバーが上昇し、野生型よりも高い活性が見られたのだと判断された。また、この変異体は、次反応(ビリベルジン→ビリルビン)を行うBVRとの親和性が野生型よりも高いことも示唆された。 一方で、HOとCPRとの複合体の結晶構造を明らかとした。これまでにHO-CPR複合体の調製は、互いの結合力が低いことから困難であった。しかし、CPRのドメイン間連結部位を短縮させた変異体を作製したところ、HOとの高い親和性を示し、安定した複合体を形成した。このHO-CPR複合体の結晶化に成功し、構造解明に至った。結果として、両タンパク質間でのユニークな電子の授受法が明らかとなった。CPRは、薬物代謝などに関与するシトクロムP450をはじめとする多くの酵素の電子供与体としても働くことから、それらの電子授受機構の重要なモデルとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度中は、NMR緩和分散測定法の実証について達成できたと考えている。また、変異体解析から、HOとCPRとの相互作用と未知であった電子伝達系の解明においても大きく進展した。そして本年度においては、HOと相互作用するCPRとの複合体構造を明らかとし、その作用機構を解明した。一方で、HOのL77A変異体の研究から、BVRとの相互作用に関する情報も得られている。本年度計画していた可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の調製法について、まだ明確な結果が得られてないという点を除いては、ほぼ計画通りに研究が遂行されていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究方針は、まずHOとBVRとの複合体の調製を行っていく。この研究については、「研究実績の概要」にあるHOの変異体L77AがBVRと高い親和性を示すことから、この変異体を用いて複合体の調製を行う。その後は、立体構造解析を目指した結晶化を検討する。 HOが反応副産物として発生するCOの生理機能の解明については、cGMPを合成するsGCとHOとの相互作用を調べていく。現在のところ、ターゲットとしたい哺乳類のsGCの安定した調製法が構築されていない。一方で、昆虫のsGCについては、大腸菌内での発現・精製法が確認されているので、この方法を参考にし、哺乳類のsGCについても大腸菌内での発現系の構築を行う予定である。 また次年度は本課題研究期間の最終年度であるため、成果発表も重点的に行っていく。まず、HOのNMR緩和分散測定に関する研究成果の論文発表を行う(現在投稿中)。そして、その成果を受けて行ったHOの79番目のPheの変異体についての研究と、同酵素の77番目のLeuの機能に関する研究の成果をそれぞれ論文発表する予定である。どの論文においても、査読付き国際雑誌での発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として生じた77,088円は、論文の別刷り代として使用する予定であった。昨年中に投稿した論文(J. Harada et al., JBC in press)の採択が3月中頃となり、別刷り代の請求がまだない状態である。その為、平成25年度には使用できなかった。 上記の理由にあるように、論文の別刷り代として使用する予定である。
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