フラーレン溶媒和結晶を用いて有機太陽電池における熱アニール効果を分子レベルで明らかにした。アクセプターフラーレン誘導体の溶媒和結晶を加熱すると,脱溶媒によってアモルファス相へと相転移し,秩序構造の乱れによって電子移動度が低下する.このアモルファスフラーレンをさらに高温で加熱すると,加熱結晶化による秩序構造を示し,電子移動度が再び向上した.移動度の変化は容易に予想できる結果であったが,太陽電池における熱アニール効果は全く逆の挙動を示した.すなわち,アモルファ相を示す温度範囲で最大のエネルギー変換効率が得られることがわかった.これまで,熱アニールによって向上する電子移動度が太陽電池特性の律速となると考えられてきたが,実際には,ドナーアクセプター界面における分子的な密着性が太陽電池特性を向上する上で重要な因子となる事を示唆するものである.本成果は,結晶構造制御や電子移動度の向上を目指す従来のアプローチを見直し,さらなる性能向上に向けた材料設計およびデバイス設計指針を得る上で貴重となるデータを提供するものである. また、フラーレンダイマーを合成し、固体薄膜における電子移動度の熱アニール効果について調査した。加熱によって変化する構造物性と電子物性から、ダイマー解離に伴うラジカル生成および相変化が生じていることがわかり、電子移動度に大きく影響する事を明らかにした。
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