研究課題/領域番号 |
24750178
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
飯野 裕明 東京工業大学, 像情報工学研究所, 准教授 (50432000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 多結晶薄膜 / 液晶性 / 溶液プロセス / アニール |
研究概要 |
平成24年度は、加熱過程と冷却過程で相転移温度が違う過冷却状態の液晶相を利用することで、従来検討してきた高温(約100℃)での製膜だけでなく、室温に近い温度においても表面均一性に優れた多結晶薄膜の作製および、アニール等により溶液プロセスで作製した多結晶薄膜の高品質化を目指し検討をおこなった。過冷却状態の液晶相を発現するモデル材料としてはフェニル-ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体(Ph-BTBT-10)を主に用いた。 有機溶媒として当初検討してきたジエチルベンゼンから沸点の低いキシレン溶媒にすることで、65℃までの比較的温度の低い条件でも均一な多結晶薄膜が作製できることを確認した。さらに、沸点の低いクロロホルムをキシレンに混合した溶媒においては、40℃といった室温に低い温度であっても均一な多結晶薄膜が作製できることを明らかにした。この60℃以下の製膜温度でも表面均一性に優れた多結晶薄膜が可能な点は、加熱スピンコートだけでなく、その他の製膜法や印刷法にも適用でき、本材料系の産業利用が可能なことを意味している。この表面均一性に優れた多結晶薄膜が液晶薄膜経由で実現できている点をXRD測定を通じて確認をしているところである。 アニールによる多結晶薄膜の高品質化に関する検討については、溶媒蒸気アニールを定量的に取り扱うことが可能な装置を開発した。作製した装置により、従来よりも5倍ほど大きさの基板においても均一に溶媒蒸気アニールを施すことに成功した。平成25年度以降に検討する多結晶膜の高品質化において、このアニール装置がさらに活躍するものと考えられる。また、モデル材料として検討してきたPh-BTBT-10においては、5分間の短い熱アニールであっても移動度が大きく上昇し、10cm2/Vsを超す移動度を示す有機トランジスタの開発に成功し、本材料系が産業的に有用であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目でモデル材料であるPh-BTBT-10において、プロセスを検討することで室温に近い40℃での製膜、5分間の短い熱アニールで移動度が10cm2/Vsを超す有機トランジスタが実現でき、研究は予想よりも順調に進んで、あと2年で研究の目的は達成できるものと考えられる。今後は、室温での製膜できるようプロセスもしくは材料の改良を進めていく。現在、新規の材料もいくつか検討を始め、さらなる低温製膜が実現できているが、移動度が達成しにくいことが懸念されている。これに関しても、平生24年度で作製した溶媒蒸気アニール装置が有効に働くものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
製膜温度の更なる低温化には、新規材料の利用だけでなく、さらに低温で製膜可能な溶媒や条件の検討などのプロセスの改善も試みていく。その結果として、室温での均一薄膜の作製及び、移動度5cm2/Vsを超す有機トランジスタの実現を目指す。室温近くまで製膜可能になった点より、今後はパターニングの検討としてインクジェット法による有機トランジスタアレーの作製を目指していく。このような集積された有機トランジスタを用いて、表示素子のバックプレーンへの応用も検討していく。この実現にはデバイスの安定性を上げる必要があり、有機トランジスタの電極のコンタクトや絶縁膜の検討も併せ進めていく必要があるものと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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