最終年度である平成26年度は、この24年度、25年度で良好なトランジスタ特性を示すことが明らかになってきたフェニルベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体(Ph-BTBT-10)の有機トランジスタ材料としての有用性を明確にするために、ボトムコンタクト構造のトランジスタの検討および、Ph-BTBT-10とソースドレイン電極とのコンタクトを改善するための研究を行った。その結果、ペンタフルオロベンゼンチオール処理を行った金電極を用いる事で、コンタクト抵抗が金電極に比べて1桁以上も小さくなることを明らかにし、厚さ300nmのSiO2を用いたデバイスにおいても、-30Vの駆動電圧で移動度が10cm2/Vsを超すトランジスタ特性を示すことを明らかにした。更に、アルキル鎖長の長いPh-BTBT-14においては厚さ100nmのSiO2を用いたボトムゲートボトムコンタクト構造のトランジスタにおいて-15Vの駆動電圧で移動度12cm2/Vs、サブスレッショルドスイングが0.24V/decの良好なトランジスタ動作を確認しており本材料が有機トランジスタ材料として大変優れていることが明らかにした。また、室温製膜やインクジェット法によるパターニングなどを実現するために、溶解度の高い材料を探索し、Ph-BTBT誘導体でアルキル鎖が短い材料になると、溶解度が高く室温に近い温度域で均一な薄膜が作製できることを明らかにした。特にPh-BTBT-8よりも短い誘導体においては、過冷却の液晶相を室温まで発現し、過冷却状態を用いた室温製膜、結晶化後は150度に近い温度まで結晶状態を保持できる理想的な材料であることを明らかにした。また、この材料を用い作製したトランジスタにおいて、Ph-BTBT-6では移動度1cm2/Vs、Ph-BTBT-8では移動度3cm2/Vsに達することが明らかになった。
|