研究課題/領域番号 |
24750180
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮田 耕充 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (80547555)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 薄膜トランジスタ |
研究概要 |
本研究は、独自に開発した高純度、高結晶性半導体カーボンナノチューブ(CNT)を用いて、その伝導特性の解明と、高移動度薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目指している。平成24年度は、高純度半導体CNTを用いた短チャネル電界効果トランジスタの特性評価と、共鳴ラマン分光を用いた純度評価法の確立、に焦点を当てた研究を行った。 前者では、コンタクト抵抗の低いPd電極を用い、200 nmのチャネル長でのFET特性を調べた。用いた試料は、リサイクルゲルろ過法によって、半導体CNTの純度を高純度化してある。光吸収スペクトルやラマンスペクトルからの評価では、試料は98~99%程の純度を有すると見積もられた。単一CNTのみが架橋したデバイスでは、オンオフ電流比~10000、キャリア移動度40~150cm2/Vs、コンダクタンス1.4~5.8μS程度の特性が得られた。この特性は、同様の直径をもつCNTでは、化学気相成長で得られた試料と同程度の特性に匹敵する。従って、分離精製プロセスに必要な超音波処理や界面活性剤による分散等で、CNTの特性が低下していないことを示唆している。一方で、多数本が架橋したFETでは、残留している金属CNTオンオフ比の低下がみられた。この結果は、分離後において金属型CNTが1~2%程は残留しているという、光吸収、ラマン散乱の結果と一致している。 後者では、2波長の共鳴ラマン散乱を利用した純度評価について検討を行った。具体的には、半導体型と金属型のラジアルブリージングモードの強度を溶液試料で測定し、未分離試料の強度と比較すること評価を行った。この結果、99%程度までの様々な半導体純度の試料では、光吸収スペクトルと同程度の結果が得られる事を確認することが出来た。今後、より高純度な半導体CNT試料においても、迅速かつより精密な評価が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、独自に開発した高純度、高結晶性半導体カーボンナノチューブ(CNT)を用いて、その伝導特性の解明と、高移動度薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目指している。目的を達成するために、分離した半導体CNTの伝導特性評価、および高純度・高結晶性CNT試料の分離法の確立を軸とした研究を推進してきた。平成24年度は、現状の分離試料を用いた短チャネルFETの特性が評価できたこと、および共鳴ラマン分光を用いた純度評価の基礎データを得らえたことより、申請書に記載した内容がおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、より高結晶・高純度CNTを得るために分離法の改善と、様々な合成法で得られたCNT試料の基礎データを収集する。高純度試料の分離法については、現段階では、ゲルろ過を行った際に、半導体CNTの溶出時の界面活性剤濃度の制御することにより、さらに純度を向上できる可能性が示唆されている。この挙動を詳細に調べることにより、高純度試料の分離法を確立していく。また、高結晶性試料では、同様に溶出時の溶出速度に着目し、CNTの長さ(結晶性)と溶出速度、そして試料するゲルのポアサイズなどが、どのように関連しているかを調べる予定である。また、より長尺なCNTの長さの簡便な評価として、原子間力顕微鏡だけでなく、発光イメージングを利用した手法を取り入れていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
CNT分離やデバイス作製に必要な消耗品や試薬を中心に研究費を使用する。想定している消耗品は、カーボンナノチューブ試料、カラム担体、界面活性剤、電極用金属(金・チタン)、メタルマスク、ガラス・プラスチック機器、等である。また、共同研究打ち合わせや、学会や研究会等で発表するための国内旅費として研究費の一部を使用する予定である。
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