研究課題
平成26年度は、主に化学修飾や分子内包によるカーボンナノチューブの機能化に関する研究を進めた。1.化学修飾に関しては、様々な試薬の検討を通じて、ジアゾニウム塩を用いた手法により、安定かつ再現性高く孤立分散したナノチューブとの反応を確認することができた。一方で、反応によりナノチューブが凝集するという問題も生じたが、濃度や時間などの反応条件を最適化することで、この問題を回避できることがわかった。また、対象とした単一界面活性剤で分散した直径1.5nm程度の試料では、半導体型と金属型で明確なジアゾニウム塩との反応性の違いは確認されなかった。一般的なチューブの分離条件を考慮すると、混合界面活性剤系などにおいて、金属・半導体における選択的な化学修飾などへと応用できる可能性がある。2.分子内包については、様々な半導体材料とナノチューブの複合材料の創成を進めてきた。具体的には、原料分子をチューブに内包し、高温での熱融合反応を利用することで、結晶性の高いポリチオフェンやコロネン骨格を持つグラフェンナノリボンなどの合成に成功した。特に、上記の化学修飾を用いた手法により、ナノチューブの光吸収を抑制し、内包物由来の光学スペクトルを高い精度で測定することが可能になった。光吸収スペクトルやラマン散乱の測定結果と理論計算との比較より、従来の条件と比較し共役系が拡張されていることが明らかとなってきた。また、イオン液体を用いた手法により、得られた内部の物質にキャリアドープできることが確認できた。これまでに得られた一連の知見や確立した手法は、今後のカーボンナノチューブ薄膜トランジスタにおける高移動度化や高機能化へ向けた基礎となるものである。
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ACS nano
巻: 未確定 ページ: 未確定
10.1021/nn507408m