研究課題/領域番号 |
24750185
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
渡邉 智 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (80579839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 希土類元素含有ナノ粒子 / ソフトリソグラフィー / アップコンバージョン発光 / フレキシブルデバイス / 近赤外発光 |
研究概要 |
これまでに作製することが困難であった希土類元素含有(RE)セラミックスを用いたフレキシブルナノ発光素子の創製を行うことが本研究の目的である。REナノ粒子を用いた「焼成が必要ない(CF)ソフトリソグラフィー法」を確立することで、低コストでナノ発光素子を作製することが可能となる。発光強度の経時劣化が少ないREセラミックスを用いることで、従来の有機発光素子に比べて長寿命かつ水溶液中でバイオイメージングも行うことができるフレキシブルナノ発光素子を作製することが期待できる。 具体的な研究計画は次の通りである。(1)粒子径の異なるREナノ粒子を合成し、(2)二種類のCFソフトリソグラフィー法を検討する。(3)近接場光学顕微鏡を用いて、ナノ領域におけるアップコンバージョン発光を評価する。 (1)REナノ粒子の合成に関する実績: 従来の均一沈殿法で粒子径100 nmのREナノ粒子の合成を行った。アップコンバージョン発光と近赤外の蛍光発光が観察できたことから、このREナノ粒子は蛍光ナノ粒子として機能することがわかった。今回新しく酵素沈殿法で粒子径40 nmのREナノ粒子の合成に成功した。このREナノ粒子も上記と同様に蛍光微粒子として機能した。この2種類のREナノ粒子は水とメタノール各々の分散液を作製することができ、溶液法でREナノ粒子膜の製膜が可能であることがわかった。 (2)2種類のソフトリソグラフィー法に関する実績: ソフトリソグラフィー法の中の1つである毛細管リソグラフィー法を用いて、REナノ粒子膜をプラスチック基板上へ作製することができた。用いたゴム状スタンプモールドのパターンサイズとREナノ粒子分散液の濃度を変えることで、REナノ粒子膜のパターンサイズやREナノ粒子膜中のナノ粒子密度を制御することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに作製することが困難であった希土類元素含有(RE)セラミックスを用いたフレキシブルナノ発光素子の創製を行うことが本研究の目的である。CFソフトリソグラフィー法を用いて、ナノサイズのRE-発光薄膜をプラスチック基板上へ作製する方法を確立して、従来の有機発光素子よりも長寿命なフレキシブル発光素子を創製する。具体的には下記の4点に焦点を絞って研究を推進する計画であった。(1) 従来のRE-ナノ粒子径(300ナノメートル)より小さいRE-ナノ粒子(最小40ナノメートル)を合成する。(2) RE-ナノ粒子膜のパターンサイズを従来の20マイクロメートルから最小100ナノメートルにする。(3) RE-分散溶液とモールドのみでパターニングが可能な2種類の手法を検討する。(4) 近接場光学顕微鏡を用いて、アップコンバージョン発光のナノ観察を行う。 研究実績の概要で示した通り、(1)のREナノ粒子の合成は計画通り進行している。(2)と(3)のREナノ粒子膜のパターンサイズに関して、毛細管リソグラフィー法を用いて従来の20マイクロメートルから5マイクロメートルまでサイズダウンをすることができた。さらに、REナノ粒子膜中のナノ粒子密度を制御することに成功した。(4)のREナノ粒子膜のアップコンバージョン発光に関して、蛍光顕微鏡を用いたマイクロスケールのアップコンバージョン発光観察と近赤外光の蛍光観察をすることで、REナノ粒子膜がプラスチック基板上で発光膜として機能することを明らかにできた。以上の結果から、当初の研究計画に沿って研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、REナノ粒子膜のパターンサイズを前年度の5マイクロメートルから当初の目標である100ナノメートルへサイズダウンをすることを目標とする。ナノサイズのREナノ粒子膜を作製できる実験条件を確立したのちに、近接場光学顕微鏡を用いてREナノ粒子膜のアップコンバージョン発光と近赤外光の蛍光発光のナノ観察を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
パターン化したREナノ粒子膜の観察に必要な光学顕微鏡(オリンパス製・約100万円)を購入予定である。前年度の研究成果を国内・国外の会議で報告するための旅費で約30万円を使用予定である。残りの予算は消耗品の購入や論文投稿費に使う予定である。
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