本研究ではp型とn型の鎖状π共役分子の配向制御技術を確立し、配向制御した有機薄膜太陽電池特性と偏光応答性を評価することで、異方的な電子物性と分子配向との相関を調べる。オリゴチオフェンを始めとする鎖状π共役分子は、分子鎖が基板に対して平行に配向すると、電荷の移動が促進され、膜厚方向の導電性が向上する。同時に偏光応答性も生じる。しかし鎖状π共役分子を基板に平行方向に配向させることは困難であるうえ、2種類以上の鎖状分子を同時配向させた太陽電池の報告例はほとんどない。 当方が有する摩擦転写法を用いて基板に平行に配列したp型導電性高分子膜を形成し、この上にp型鎖状π共役分子を真空蒸着すると、下層の高分子配向膜をテンプレートとし、高分子の配列方向に平行に配列したp型鎖状π共役分子膜を容易に得られることが分かっている。前年度ではp-n接合型素子において、p層、n層共に基板平行に一軸配向させ、その結果有機薄膜太陽電池特性が向上することを見出した。 H26年度は、逆型素子であるn-p接合型素子の形成を試みた。まず摩擦転写膜上にn型鎖状分子を蒸着すると基板面内に一軸配向することを見出した。n型分子の配向構造を微小角入射X線回折法で詳細に解析し、複数のn型分子において非常に配向度が高いn層を形成出来ていることが分かった。その上にp型半導体層をまずスピンコート法で形成して太陽電池素子とし、電流-電圧測定を行ったところ、摩擦転写膜上で面内に一軸配向したn型分子層を有する素子の方が基板に対してランダムに配向したn型分子層を有する素子よりも変換効率が高くなり、偏光応答を示した。 また、摩擦転写膜上に面内一軸配向させたn型鎖状低分子膜上にp型鎖状低分子膜を真空蒸着したところ、p型鎖状低分子も面内一軸配向することを見出した。
|