研究課題
本研究では、有機太陽電池について、分子間電荷移動(CT)励起子を用いた新たな光電変換機能を開発することを目的とし、これを可能とする分子化合物半導体材料の探索を行った。分子化合物半導体は、構成分子であるドナーとアクセプターの組み合わせにより、分子間で電荷移動した励起状態を示すCT励起系と、分子内に局在した励起状態を示すフレンケル励起系に分けられる。まず、これら電荷移動度の異なる励起系に属する種々の分子化合物半導体について、レーザー誘起光電流法を用いて光電変換機構の検討を行った。その結果、分子化合物半導体が単一成分系有機半導体に比して光電荷キャリアを生成しやすいこと、光電荷キャリアの生成効率および拡散長が中間的な電荷移動度をもつ励起系で最大化することを見出した。同様な傾向は、分子化合物半導体の類似材料であるドナー・アクセプター型ポリマー半導体についても確認された。以上の知見をもとに、中間的な電荷移動度もつ分子化合物半導体について結晶性薄膜素子の作製に取り組んだ。具体的には、アルキル側鎖を有する有機分子が結晶性薄膜を形成し易いことに着目し、これを構成分子に用いることで、高均質・高結晶性の分子化合物半導体薄膜の作製に取り組んだ。その結果、C8-ベンゾチエノベンゾチオフェン(C8-BTBT)とテトラシアノキノジメタン(TCNQ)誘導体からなる分子化合物半導体について、両分子のπ共役骨格がアルキル側鎖で挟まれた構造を有する層状結晶性薄膜を得ることに成功した。さらに、光電変換素子作製のため基礎物性評価を行い、得られた分子化合物半導体薄膜が2種類のCT吸収を介した光電変換が可能なこと、電子と正孔の両方について高いキャリア移動度(> 0.1 cm2/Vs)をもつことから光電荷キャリアを効率的に取り出せることを明らかにした。
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Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 53 ページ: 05HB12
10.7567/JJAP.53.05HB12
Transactions of the Materials Research Society of Japan
巻: in press ページ: in press
J. Phys. Chem. C
巻: 117 ページ: 16769
10.1021/jp404094e