研究課題/領域番号 |
24750192
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
関 志朗 一般財団法人電力中央研究所, 材料科学研究所, 主任研究員 (70371325)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リチウム電池 / イオン液体 / 次世代電池 |
研究概要 |
今年度は、イオン液体(IL)の物性・機能化双方を見据えた視点により、物理化学的性質の容易な推定手法開発、蓄電池の実用化レベルに資する技術進捗、多価イオン電池をはじめとした次世代電池系への挑戦を行い、社会的要請の高い電池技術に進捗をもたらすため、以下三つの事項について研究・開発を推進した。 1.ILの物理化学的性質の一般化:アルキル鎖長を変化させたILでの各種物性の検証(学術論文投稿準備中)や混合系ILへの展開(学術論文投稿準備中)を行い、イオン液体物性の把握・一般化を推進した。 2.ILのLi二次電池用電解質としての高性能化実証:IL中に溶解させるリチウム塩濃度の変化に伴い、電池のサイクル寿命が変化することを報告し、これを学術論文で報告した。 3.次世代エネルギー変換・貯蔵デバイスへの進化:次世代型蓄電池の陽イオン種として期待されている、Na,Mg,Caを有する金属塩を溶解させた電解液(PC系)について、各種物性の把握に着手した。イオン径が大きなものほど、粘性が小さくなる(Li>Na、Mg>Ca)傾向が見られ、価数の変化や濃度の変化にかかわらず、同様の傾向が見られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) ILの物理化学的性質の一般化:達成度95%:アルキル鎖長変化系については、共同研究先などとの検討結果(分光的手法、計算科学的手法)なども含め、広範なデータ取得に成功した。また、混合ILについては汎用IL種同士の多数検討を行うことができ、データベース量として十分な結果を得ることができた。 (2) ILのLi二次電池用電解質としての高性能化実証:達成度80%:塩濃度変化の電池寿命への影響を明らかにはしたものの、この手法を用いて確実に500サイクル程度の安定な充放電を行える条件を見出したには至らず(除分子設計)、達成度は80%とした。 (3) 次世代エネルギー変換・貯蔵デバイスへの進化:達成度80%:次世代型蓄電池向けの金属イオン種に関する物性把握を開始した段階であり、現状で電池化を行っているわけではないため、達成度は80%とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度での研究推進方策を以下のように設定する。 ①ILの物理化学的性質の一般化:粘性などの複数因子に支配される物性についての因子分離・抽出のため、分子量・構造が大きく変化しないものの、粘性が変化する物質(例えば、-O-の挿入、非対称アニオン)に着目し、上述した物性評価・計算科学的手法による解析を行う。粘性に及ぼす分子量・構造・相互作用等の因子を分離し、その寄与割合を可能な限り定量化する。 ②ILのLi二次電池用電解質としての高性能化実証:平成24年度に得られた知見を元に、更なる充放電サイクルの延伸を目指す。基軸となる材料系に対して、Li塩濃度変化・官能基導入のIL添加などを行い、目標を達成しうる条件を選定する。 ③次世代エネルギー変換・貯蔵デバイスへの進化:正極材料にMgCo2O4・CaCo2O4を用いた[正極| Mg or Ca]セルを作製し、電気化学的特性評価を行う。安定な充放電作動を目的とするが、これが行えない場合、交流インピーダンス測定を行い電極|電解質界面の挙動を把握し、添加剤(Grignard試薬等)有無の影響等を詳細に把握しつつ充放電可能条件を抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の予算としては、試薬・出張旅費の他に、測定精度の向上などを目的とした、精密秤量計の導入を行う予定である。昨年度から引き続き、適切な予算執行につとめる所存である。
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