酸化チタン光触媒薄膜は、紫外光照射下で酸化分解特性および光誘起超親水化特性を発現する。両特性を活用することで、セルフクリーニング材として応用することができる。すなわち、付着油汚れが酸化分解除去されることと雨水が超親水化表面と付着汚れとの間に侵入し汚れを洗い流すことによってクリーニング効果が発現するといわれている。既に、酸化チタン光触媒薄膜が高いクリーニング効果を示すことは、我が国で実用化された商品等により容易に判断できるが、紫外光と流水とが同時に付与された際のセルフクリーニング効果(付着汚染物質の除去挙動)の定量的な検討はこれまでに行われていない。セルフクリーニング材が活用される場面や地域によって紫外光強度および流水量(例えば降水量)は大きく異なる。環境調和型材料である酸化チタン系セルフクリーニング材のさらなる発展のためには、上記検討は重要であると考えられる。そこで、本研究では紫外光と流水とを同時に付与した際のセルフクリーニング効果に与える紫外光強度の影響を調査した。その結果、所定量の流水が付与されることによって、屋内(蛍光灯を使用)の紫外光強度と同程度の微弱な紫外光においても十分なクリーニング効果が得られることを明らかにした。さらに、水が超親水化表面と付着汚れとの間に侵入し汚れを洗い流す発現メカニズムにおいて、その超親水領域はナノ~マイクロメーターレベルの小さな超親水化ドメインであっても十分な汚れを除去することができる効果的な水の侵入が起こることが示唆された。
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