研究課題/領域番号 |
24750206
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50613296)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 多孔性材料 / カーボン系材料 |
研究概要 |
本研究では、「多孔性物質作製・ナノ構造制御」をキーワードとした研究をおこない、ゾル-ゲル膜からのメソ多孔性グラフェン膜の作製と機能化を最終目的としている。メソ多孔性グラフェン材料のみならず、研究遂行の過程で得られる各種カーボン系材料における構造制御・機能化も併せて研究対象とすることで、多岐に渡るアプリケーションへのアウトプットを視野に入れた研究をおこなってきた。本年度は、各種ポリマーを用いてナノレベルの構造が制御されたゾル-ゲル高分子膜を金属基板上に作製するとともに、熱処理条件を制御することでカーボン化・グラフェン化を試みた。ゾル-ゲル高分子膜の作製条件を系統的に変化させた結果、厚さ20ミクロンの金属箔上にメソ構造体を作製することおよびカーボン化に成功した。これまで、カーボン系材料作製にはシリコン基板が用いられてきたが、表面化学状態が異なる金属基板上への作製例はほとんどない。加えて薄膜形状の金属基板では基板表面のラフネスが比較的大きいため、長距離秩序を有するメソ構造の作製は困難であった。本研究ではこの問題を解決するために、1)前処理を施した金属箔上への直接成膜、2)金属箔上への異種基板からの構造転写処理を試みた。結果としてどちらの手法においてもメソ構造を金属箔上に作製することに成功した。構造形成手法を精密化したのみならず、各種顕微鏡およびX線回折装置を用いた構造解析をルーチン化することにより多種サンプルを迅速に検討することが可能になった。金属箔上に作製したカーボン材料はグラフェン作製における前駆体となるだけでなく、キャパシタとしての応用が期待されるため、薄膜のグラフェン化と併せて次年度においても引き続き研究を遂行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属基板上へのポリマーメソ構造体の形成に時間要しており、当初の平成24年度研究計画と比較すると達成度は8割程度である。これは、用いている基板の表面物性が一般的な基板とは大きく異なるためであり、基礎的な条件を整えるステップに時間を要したためである。一方で、メソ構造の試料作製手法を系統的に検討する中で、研究の最終目標に対してマイルストーンとなる成果がカーボン系材料で得られつつある。金属表面へのカーボン材料の直接合成は、グラフェン膜作製に至る中間的な成果として論文発表すること可能であると考える。国際学会において情報収集した結果、申請者と同様のモチベーションによる研究を進めている海外研究グループが存在することが明らかになった。研究アプローチは異なっており、更に、構造体の完成度も本グループに比較して芳しいとは言えない。当該研究テーマの注目度と高い難易度を反映している一方で、迅速な研究の遂行・論文発表が望ましい。平成24年度の後半にはSAXS測定装置が常時アクセス可能になったため、構造解析は今後効率的に実施する体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
ポリマーメソ構造体作製に関する知見は平成24年度の研究成果により整いつつある。さらに作製条件を最適化することで系統的なメソ構造制御を目指す。カーボン系材料に対して得られた成果は、平成24年度と同様に、論文誌および学会にて継続的に発表予定である。当初の研究計画においては、すべてのサンプルはグラフェン化後に解析することを計画していた。一方で、今後は、効率的な解析を目的として、カーボン化に留めるサンプルとグラフェン化させるサンプルを適宜作り分けることで対応する。これは、ポーラスカーボン系材料の解析が比較的容易であるのに対して、多孔性グラフェン膜の解析は手間がかかるためである。グラフェンの解析手法としては原子間力顕微鏡やラマン分光装置を挙げられ、平成24年度においてこれらの解析手法も兼用してきた。一方で、用いた金属基板由来のノイズにより精密な解析が困難であることが研究の中で明らかになった。研究手法を研究計画より一部変更することでこれに対応する。得られた薄膜をシリコン基板上に転写後、グラフェン膜形成を確認することを検討している。メソ構造の解析はグラフェン膜ではなく、マイルドな熱処理条件で得られるカーボン膜に対しておこなう。平成25年度に計画しているデバイス化に至るプロセスは難易度が高いが、共同研究者らとのディスカッションの上で進めたい。デバイス化時の材料に対する要求(サイズ、構造の規則性)を早急に満たした上で、最終的にはFETデバイスの作製と機能の発現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は当初見込みより物品費が低くなった一方で、旅費・その他の費目を多く計上した。これは、多くの学会発表や海外での共同実験の機会を得た一方で、構造形成に関する研究段階においては多くの物品を必要としなかったためである。加えて、オープンアクセスジャーナルScientific Reportsへの投稿に伴う費用が発生したため、その他の項目が当初計画よりも大きな額となった。次年度においては、研究の進捗に伴い比較的物品費に比重を置いた研究費の使用を計画している。具体的には、各種試薬・高純度ガス・転写用基板が大量に必要となると考えられるため、平成24年度残額と併せて、消耗品費として1,000千円を予定している。平成25年度においては、500千円を超える備品の購入は計画していない。次年度においても学会への参加を計画している。国内学会を中心に数件の学会発表を計画しており、旅費は300千円程度にとどめる予定である。また、学会参加費、論文校正に加えて論文のオープンアクセス料の経費として300千円を使用する予定である。
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