研究概要 |
本研究で利用するグラフェンの合成法は申請者が独自に開発した手法であり、高結晶性のグラフェンを得た。同手法は膨張黒鉛を溶媒中で超音波照射する簡易な方法であり、今後のグラフェンの層数や結晶サイズの制御が可能になり重要性がある。 1.膨張黒鉛(100mg)を有機溶媒(MP、300ml)に混合し、超音波処理(5度、1-24時間)を施すことで高品質グラフェンを合成した。合成したサンプルに対し、分光分析器機(Raman)、SEM、TEM、X-Ray、XPSの解析を行うことでグラフェンの構造や電子状態の解析、そしてグラフェンの層数、結晶サイズの検討を行った。グラフェンの層数:1枚-7枚、平均3枚、全体中48%、面積:1・m2-13.3・m2、平均面積4.57・m2、の高結晶性のグラフェンを製造した。 2.合成したグラフェンへのホウ素や窒素のドーピング処理を行った。処理時間をそれぞれ5分,10分,30分で処理。合成されたサンプルをXPSにより解析を行い、処理時間が長くなるにつれドーピング効果が1%から5%まで向上した。 3.1および2により合成したグラフェンとPUの複合材料開発をした。グラフェンとPUの複合材料の引張強度を比較すると、弾性係数の結果はPUでは5MPa程度の値を示すが、グラフェン複合材料では最大62.9MPaと最も高い値を示した。引張応力と破壊時の伸び率を比較すると、PUでは15.6MPaと1038%の値を示すが、グラフェン複合材料では37.4MPaと732%の値を示した。さらに、グラフェン複合材料の電気伝導度は1.58×10-3S/cmと透過率83%の値を示した。 4.Mussel Proteinを使用しCNTの分散実験をした。Mussel Protein濃度の増加のよりCNTの分散安定度(溶液中)が増加することを肉眼で確認した。CNTの濃度は最小0.1wt%から最大10wt%までした。一方、グラフェンを用いた透明導電薄膜形成の実験を行うには残念ながら時間が足らず、グラフェンの予想する最適条件の結果を確認することはできなかった。
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