研究課題/領域番号 |
24750220
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
網代 広治 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50437331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 薬物徐放 / ゲル / 薬物伝達システム |
研究概要 |
本研究の目的は、N-ビニルアセトアミドおよびN-ビニルホルムアミドの化学構造の特徴を活かして、ノニオン性ヒドロゲル表面のみを選択的にカチオン化する手法を利用し、新規インテリジェントゲルを体系化することであった。 当該年度では、これまでに調製した表面ポリイオンコンプレックスゲル(sPICゲル)を利用して、種々の薬物の徐放を行なった。例えば、放出挙動の異なるデキストラン硫酸(分子量9000程度)とアルーラレッドを同時に担持して、その放出挙動を調べたところ、酸性条件下および中性条件下において、それぞれ放出量が異なり、外部条件によって異なる薬物を放出制御可能であることが分かった。これをpH2とpH7で単独放出させただけでなく、交互にpH条件を変化させることにより放出された化合物をUVおよびGPCにより分析を行ない、放出挙動を詳細に調べた。 また実用薬剤への応用を目指して、種々の薬物モデルについても検討を行なった。ここではインシュリン、アルブミン、リゾチームを薬物モデルに用いてsPICゲルからの放出を試みたが、現段階ではその放出を制御しきれていない。おそらく、高分子量体の電荷を有する化合物という構造が、これまでの低分子量化合物、中性の高分子量化合物、という条件と異なるためと考えている。 また関連して別のインテリジェント材料を分子設計した。つまり、表面選択的に薬物を担持して徐放可能である素材を設計した結果、親水性置換基を導入したブロック共重合体を利用することにより、徐放が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、N-ビニルアセトアミドおよびN-ビニルホルムアミドの化学構造の特徴を活かして、ノニオン性ヒドロゲル表面のみを選択的にカチオン化する手法を利用し、新規インテリジェントゲルを体系化することである。 当初の提案通り、表面ポリイオンコンプレックス(sPIC)ゲルを利用して、種々の薬物放出を行ない、放出制御可能なものとそうでないものとを区別する新しい有用な知見が得られ、実用的な条件を整理しつつある。つまり、電荷を有する薬物モデルは低分子化合物であることが好ましいこと、また高分子量化合物を薬物モデルとして用いるには電荷を有しないものが好ましいことが分かった。さらに分析手法としてGPCを適用することにより考察が簡便となった。 表面を利用する薬物放出材料に関連して、新しく親水性置換基を導入したブロック共重合体を分子設計し、これを薬物放出材料に応用することができた。 以上の理由から、達成度としておおむね計画通りに進行していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
N-ビニルアセトアミドおよびN-ビニルホルムアミドゲルの相互侵入網目の相手として、種々の化合物を検討する。特に、これまでに調製することができたアクリル酸に加えて、ビニルホスホン酸を用いたsPICゲルについてpH応答性を調べ、その放出挙動の特徴を調べる。 また、種々の化合物を薬物モデルとして応用可能かどうかについて調べてゆく。 さらに、N-ビニルアミドゲルをインテリジェントゲル化するための分子設計を引き続き行い、必要な実験を取り入れてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲルの合成と構造解析およびその物性評価と徐放実験には、有機合成関連器具が必要である。また、実験において化学合成と徐放実験用の試薬代、ガラス器具代が必要である。また、情報や資料収集のため講演会・研究会等に参加する旅費、日本化学会・高分子学会・バイオマテリアル学会において研究成果を発表するための国内旅費が必要である。さらに国際学会で最先端の情報収集及び研究発表を行なうために、外国旅費を必要とする。また、研究補助、資料提供・閲覧、外国語論文校閲、印刷費、通信費をそれぞれ必要とする。
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