研究課題/領域番号 |
24750223
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石毛 亮平 京都大学, 化学研究所, 助教 (20625264)
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キーワード | 主鎖型液晶性ポリエステル / 側鎖型液晶性高分子 / トリブロック共重合体 / パーフルオロオクチル基 / 小角X線散乱 / 広角X線回折 / 層状ナノ周期構造 |
研究概要 |
原子移動ラジカル重合法に基づき,パーフルオロオクチル基をメソゲンとする含フッ素側鎖型液晶性高分子(PFA-C8)を末端Aブロック,主鎖型液晶性ポリエステル(BB-5(3-Me))を中央BブロックとするABA型トリブロック共重合体PFA-C8-b-BB-(5-Me)-b-PFA-C8(PFA-C8の重量分率wAが各々0.16,0.38,0.48,0.60,0.78)を合成し,相転移挙動,モルフォロジーを粉末状固体(バルク),スピンコート薄膜について調査・解析した.H24年度に実施した放射光(SPring-8,兵庫県,播磨)を用いた小角X線散乱(SR-SAXS)及び広角X線回折(SR-WAXD)測定に基づく研究により,このブロック共重合体が広い組成比範囲(wAが0.38~0.78)にわたって乱れの少ない層状ナノ周期構造を形成し,各ブロックの主鎖は層界面に垂直に配向して液晶相を形成することを解明している.H25年度はさらに,詳細な温度可変SR-SAXS実験を実施しwA= 0.78の試料において,中央ブロックのBB-5(3-Me)の液晶-等方相転移に伴い,層状構造から柱状構造へのモルフォロジー転移が起こること,またこのモルフォロジー転移の前後で配向が維持される(等方相転移後,再び液晶相へ降温すると層構造の配向が回復する)ことを見出した.また,wA= 0.16の試料においては,PFA-C8の形成するスメクチック相の配向が,wAが0.38以上の試料と全く異なり,偏析界面に対してスメクチック層が平行に配向することを見出した. また,PFA-C8のホモポリマーについて,粉末試料に対する広角X線回折,配向薄膜に対する斜入射X線回折実験に基づく詳細な構造解析を実施した結果,このものがSmB相ではなくメソゲンが層に対して傾斜したtilted hexatic相(SmFまたはSmI)を形成していることを解明した.さらに,赤外分光測定に基づきスペーサー(ジメチレン鎖)部の局所配向を評価することにも成功し,これらをまとめた結果は現在Macromolecules誌に投稿済み(審査中)である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き,SPring-8における放射光小角X線散乱(SAXS)実験のビームタイムを充分に確保することができたため,温度可変SAXS実験,スピンコート薄膜の斜入射SAXS等を実施できた.薄膜に対する実験からは,バルクと異なる構造が形成されていることを示唆する実験結果が得られている.また,PFA-C8の分率が低い場合には,これが形成するスメクチック相の層が偏析界面に平行に配向するという新しい現象を見出すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出した液晶相転移に伴うモルフォロジー変化,PFA-C8のスメクチック相の配向の組成依存性,薄膜の高次構造等についてさらに詳しい解析を実施し,検証する.これらの新規現象について,査読付き雑誌への論文投稿をする.
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の物品費は当初の想定より若干多くなったが,昨年度の繰越金400,000円があったため,最終的に約300,000円を繰り越すこととなった .H26年度は,モノマー,溶媒等の試薬,ガラス器具や必需品の追加購入に加え,加温装置等を購入するため,前年度の繰越額と交付予定額を合わせた1500,000円が必要となる見込みである.
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