H27年度は,液晶性ABA型トリブロック共重合体試料PFA-C8-b-BB-(5-Me)-b-PFA-C8(含フッ素側鎖型液晶性高分子であるPFA-C8ブロックの体積分率φAが各々0.11,0.28,0.37,0.54,0.70,各々P1,P2,P3,P4,P5と呼称)の透過型電子顕微鏡(TEM)観察を実施した.染色後の試料のTEM像では,約25 nm周期の層状偏析構造が観察され,小角X線散乱測定(SAXS)結果と一致することを確認した.さらに,前年度のSAXS解析からすべての試料においてグレインサイズが小さい(積層数が3~8)という結果を得ていたが, TEM像においては層状ドメインが細断され多数のグレイン境界が存在する様子が観察され,ここでもSAXSおよびTEM観察結果の良い一致を見出した.また,SAXS解析から得られる層厚と長周期の比から評価したAブロックの体積分率と1H-NMR測定に基づいて評価した値の間に不一致(前者が後者より20~30%程度小さくなる)が認められたが,この現象もグレイン境界にAブロックが偏析する機構により合理的に説明可能であることを確認した. SAXSと同時に測定した配向試料の広角X線回折より,P1以外の試料ではPFA-C8とBB-5(3-Me)の主鎖がともに界面に垂直に配向することを確認した.一方,P1においてはBB-5(3-Me)の主鎖が界面に垂直である点は他と同様であるが,PFA-C8ブロックはパーフルオロオクチル側鎖の形成するスメクチック相がBB-5(3-Me)のそれと一致するように主鎖が界面に平行となる配向を確認した.この現象は,φAが大きい領域では主鎖の広がりの整合性が充填形態を支配するのに対し,φAが小さい領域ではA,Bブロックのスメクチック層の配向の整合性が充填形態を支配していることを示唆すると考えた.
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