研究課題/領域番号 |
24750224
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小椎尾 謙 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20346935)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高分子電解質 |
研究概要 |
リチウムイオン二次電池は次世代の大容量蓄電デバイスとしての利用が高く期待されている。このことを実現するためには、「安全面の飛躍的な向上」と「高速充電化と大容量化」の達成が急務である。本研究では、電解質としてカーボネートオリゴマーを用いて、上記性質を満たす全固体型高分子電解質を開発することを目的とする。 本年度は、カーボネートオリゴマーとして、カーボネート基間のメチレン連鎖数が、3、4、5 および6 のもの、これらが種々のモル比で共重合されたもの、さらには、各カーボネートオリゴマーで分子量が500、800、1000 および2000 の試料を用いた。リチウム塩として、過塩素酸リチウムを用い、0.5 ~2.0 Mの条件で電解質を調製し、導電率、粘度の温度依存性を測定した。さらに、塩のポリカーボネートオリゴマーへの配位状態等を評価するため、種々の温度で赤外吸収分光測定を行った。 本研究で使用したカーボネートオリゴマーの場合、1 Mの濃度で最も高い導電率を示した。塩濃度が上昇すると、キャリアイオン数とともに粘度が増加する。これらの関係は導電率に対して、トレードオフの関係であるため、1 Mにおいて極大値を示したと考えられる。 導電率と粘度の積を算出して、見かけのキャリアイオン数を算出した結果、カーボネートオリゴマーの分子量の増加に伴い、その値は増加した。リチウムイオンのホッピングは、カーボネート分子内と分子間に大別され、分子間の方が障壁は大きいと推測される。このため、分子量が高いカーボネートオリゴマーの方が高い見かけのキャリアイオン数を示したと考えられる。以上の結果より、ポリカーボネートオリゴマーを用いて、高い導電率の電解質を調製するための指針が明らかとなった。 平成25年度は、さらに、オリゴマーの多分岐化、無機物の充てんにより、実用レベルに近い導電率の電解質の調製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載していた平成24年度の計画概要は下記の通りである。 カーボネートオリゴマーの粘度・ガラス転移温度・伝導度測定 → ○カーボネートオリゴマーのイオン伝導機構の解明 ○架橋高分子電解質調製のための最適試料の選定 研究実績の概要で述べたように、これらの当初の計画概要をほぼ完了し、平成25年度の研究に着手している状況であるため、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載している平成25年度の計画概要は下記の通りである。 →「種々の架橋密度を有する架橋高分子電解質」および 「無機微粒子充てん架橋高分子電解質」の合成と伝導度・力学物性測定 リチウムイオン二次電池の安全性、高速充電化と大容量化を可能とする全固体型高分子電解質の創製 当初の予定通り無機微粒子の充てんと架橋の導入を実施予定であるが、ポリカーボネートオリゴマー単体と架橋化の間に位置する「ポリカーボネートオリゴマーの多分岐化」も実施する予定である。これは、多分岐構造を導入すると、イオンのホッピングを助長する可能性があるためである。これらの知見を踏まえ、適度な多分岐構造あるいは架橋構造を導入することで、目標達成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、化学試薬などの消耗品と成果発表のための出張旅費に充当する。
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