昨年度、エレクトロスピニング法により直径百~数百nmの均一なイオン伝導性ナノファイバーを作製し、ナノファイバー単体のプロトン、アニオン伝導度測定に成功した。その結果、ナノファイバーは通常の電解質膜と比較して非常に高いイオン輸送特性を有することが明らかにした。 本年度は、有機・高分子材料におけるナノイオニクス現象の実証を目指し、ナノファイバーにおけるイオン伝導挙動を詳細に検証した。さらに、エネルギー変換デバイスへ応用に向け、イオン伝導性ナノファイバーを用いた電解質膜を作製し、燃料電池用電解質膜として評価した。具体的には以下を実施した。 1) 各種プロトン伝導性高分子を合成、ナノファイバー化し、高分子構造とナノファイバーにおけるプロトン伝導特性の相関を明らかにした。また、ナノファイバーの断面TEM観察、偏光IR測定、含水率測定などから相分離や高分子鎖配列など内部構造を評価し、ナノファイバーにおける効率的なイオン輸送チャネル形成に基づく高速プロトン輸送(有機ナノイオニクス現象)を実証した。 2) 高プロトンあるいはアニオン伝導性ナノファイバーを同一あるいは類似の高分子電解質中に複合化し、複合電解質膜を作製した。ナノファイバーの複合化により、従来達成が困難とされてきた燃料電池用電解質膜として求められる特性(高イオン伝導性、低ガス透過性、高安定性)を同時に満たすことができることを明らかにし、燃料電池材料として実用化に向けた足掛かりを得た。
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