前年度決定した最適条件化にて天然ゴム-graft-ポリスチレン(DPNR-graft-PS)を調製し、クロロスルホン酸によりスルホン化を行った。得られたスルホン化DPNR-g-PS(SDPNR-graft-PS)のモルフォロジーをTEMにより観察し、プロトン伝導度をインピーダンスアナライザーで測定した。 1.TEMによるSDPNR-graft-PSのモルフォロジー観察 クライオミクロトームで作成したSDPNR-graft-PSの超薄切片のTEM観察を行ったところ、0.8 Nクロロスルホン酸でスルホン化することにより完全に連続なナノマトリックスチャネルが形成されることが明らかとなった。以上の結果より、スルホン化におけるクロロスルホン酸の最適濃度を、0.8 Nに決定した。 2.プロトン伝導度測定 ナノマトリックスチャネルを有するSDPNR-graft-PSのプロトン伝導度は9.8x10–2 S/cmであり、スルホン化PSの約3倍であった。また、Nafionのプロトン伝導度よりも高い値を示した。これは、SDPNR-graft-PSが連続なナノマトリックスチャネルを形成していることに起因すると考えられる。また、プロトン伝導度のアレニウスプロットの傾きより求めた活性化エネルギーは、12 kJ/molであった。この値より、ナノマトリックスチャネルを有するSDPNR-graft-PSにおけるプロトンは、プロトンが-SO3Hからその隣のSO3Hにジャンプすることにより起こるGrotthus機構で輸送されていると考えられる。
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