研究課題/領域番号 |
24760003
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
窪田 崇秀 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助手 (00580341)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | スピントロニクス / Mn合金 / 磁気異方性 |
研究概要 |
本申請課題では高磁気異方性垂直磁化薄膜をSi等の半導体単結晶基板上にエピタキシャル製膜し、スピン偏極したキャリアを半導体中に注入することを目的とした。 研究実施計画に基づき、単結晶Si基板上にL10規則層のMnGa薄膜のエピタキシャル成長を試みた。これまでのところ、垂直磁気異方性を有する薄膜は得られていない。 一方、Mn-Ga系薄膜のスピン分極率の定量的評価のため、MnGa/Fe(又はCo)/MgO/CoFeBからなるトンネル接合の磁気抵抗効果についても研究を行った。その結果、MnGaとMgOの界面にFe又はCoを挿入することで、磁気抵抗変化率が5倍程度まで増大した。これは半導体へのスピン注入を行う際、Mn-Ga垂直磁化薄膜と半導体(又はトンネル障壁層)との界面にFe、Co等の挿入層を用いることで、スピン注入効率を増加させられることを示唆する成果である。 さらに、界面層を必要としない高スピン分極材料の探索にも先行して取り組んだ。ここでは、理論計算によって高いスピン分極率が予見されている、MnGa合金にCoを添加したMn-Ga-Co_<x>に着目した。Mn-Ga-Co_<x>のエピタキシャル薄膜を、MgO(100)単結晶基板上に作製し、その結晶構造及び磁気特性、電気伝導特性のCo組成(x = 0 - 1)依存性を系統的に調査した。その結果、Co組成を増大させた場合、x = 0.5付近で結晶構造は立方晶から正方晶に変化し、Co添加によって電気抵抗率が増大することが明らかになった。得られた物性は理論計算結果に対して矛盾のない傾向を示している。MgO基板上ではあるが、良質なエピタキシャル薄膜が作製出来たことにより、今後、半導体上への製膜、スピン注入特性の評価に応用可能な新たな材料を見出すことに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果によって、Mn系垂直磁化薄膜の基礎的な磁気特性及びトンネル磁気抵抗特性についての知見は充分に蓄積されている。一連の成果は、半導体へのスピン注入効率を議論する際に、スピン分極率の見積もりに欠かせない情報である。 しかしながら、半導体基板上への高磁気異方性を有するMnGa合金の製膜については、当初の計画から遅れているため、全体として達成度は、“やや遅れている”とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、Mn系材料について半導体基板上でのエピタキシャル薄膜の作製に注力する。 現状の課題は、Si基板の表面処理条件が最適化されていない点である。現在用いているフッ化水素酸を用いた基板処理条件を見直すとともに、超高真空中における基板表面のイオンビームエッチングといった異なる手法についても検討を行う。 使用する半導体基板の変更についても状況を見極めながら検討する。 材料についての知見は本年度の成果で十分に蓄積されているため、エピタキシャル膜の作製に成功し次第、電気伝導特性の評価を進め、Mn系垂直磁化薄膜の半導体へのスピン注入特性の評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
|