研究課題
【H25年度の成果】①d0バンド絶縁体をベースとした強誘電体の開発については、PFMを用いてSrTaO2N薄膜の強誘電性の空間分布を詳細に評価した。その結果、ヴァージン状態では数10nmサイズのドメインのみが圧電応答を示し、周囲のマトリクス領域は電場によって圧電応答が誘起されるリラクサー的な挙動を示すことを見出した。第一原理計算を用いてエピタキシャル歪みと結晶構造の安定性を調べた結果、リラクサー的挙動を示すcis型のマトリクス中に、trans型の強誘電相が共存していることが示唆された。②d0バンド絶縁体へのキャリア導入については、高移動度のn型半導体であるアナターゼ型TaON薄膜の合成に成功した。③酸窒化物強誘電体の合成については、固相エピタキシー法を用いてLa0.75Sr0.25MnO2.64N0.36薄膜の合成に成功し、酸化物薄膜よりも高いキュリー温度を示すことを明らかにした。【期間全体を通じた研究成果】遷移金属酸窒化物を対象として、高品質なエピタキシャル薄膜の合成による①強誘電体、②半導体、③強磁性体の開発を目的に掲げた。並行して、薄膜中のOとNを確度・精度よく定量可能な重イオンERDA測定装置も構築した。①強誘電体については、SrTaO2Nのエピタキシャル薄膜中に古典的な強誘電性とリラクサー的な強誘電性を示す相の共存を見出した。理論計算との比較から、歪みの大きな微小領域でtrans型のOとNの配列が安定化される可能性が示唆された。②半導体については、SrTaO2NおよびアナターゼTaONが、アニオン空孔によって電子をドープすると金属(縮退半導体)化できることを示した。③強磁性体については、LaSrMnO3-xNxの強誘電性を確認し、キュリー温度が酸化物より高いことを見出した。以上より、遷移金属酸窒化物の電子機能材料としてのポテンシャルを明確に示すことができた。
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Crystal Growth & Design
巻: 14 ページ: 87-90
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Chemistry of Materials
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http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2013/50.html