研究課題/領域番号 |
24760006
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
加来 滋 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80583137)
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キーワード | スピンエレクトロニクス |
研究概要 |
希薄磁性半導体の電子構造を解明することを目的とし、弾道電子顕微鏡を用いた、GaMnAsの局所領域における電子構造解明を目的とした。 本年度は、半導体超格子構造の作製、および表面ベース電極の形成、これらが可能な真空システムの開発、ならびに、その弾道電子顕微鏡による測定を行うことが出来た。さらに、GaAsを基板として、従来よりも平易に層状反強磁性であるCr(001)薄膜を得ることに成功した。これにより、スピン偏極STM用の探針の磁性確認を行う手段を得た。これらにより、磁性針を使った、GaMnAsの電子構造の磁気的特性まで含めた測定が可能な準備を整えることが出来た。 一方で、AlAs/GaAs/AlAsのヘテロ構造(量子井戸)に関しては、実際に弾道電子顕微鏡による局所的な量子準位電子構造の測定を行うことが出来た。トランスファーマトリックスメソッドによる計算から、膜厚の空間不均一性が1~4MLに対応する量子準位のずれが観測された。このために、10乗の電流電圧プリアンプを開発しシステムのS/N比を向上させた。弾道電子顕微鏡による測定では、最表面が原子レベルで平坦でないと、その凹凸情報が、測定結果に影響を与えてしまうため、現在は平坦化の技術向上を課題としている。 しかしながら、実際にヘテロ構造を作製し、コレクタ電流の空間不均一性まで検出できたことから、GaMnAsを井戸とする構造を測ることで、電子構造の評価が可能なところまで到達できたと考えている。 また、これらの研究を通して、スピンSTM以外に、時期的に電子構造を測定する手段としてスピンバルブ電極を用いることが有効であることも見出し、実際に、Fe/Au/Fe電極を作製可能なシステムを作製し、現在測定に挑戦している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的としてた、GaMnAsの電子構造測定には、当初予測していなかった、ヘテロ構造の作製プロセスの困難さ、最表面の原子レベルでの平坦表面の必要性などの技術的問題が伴うことが分かり、解明に至らなかった。しかしながら、当初予定していた実験は予定より遅れてはいるが、今後可能に出来ると考えており、さらに、当初予定していたスピンSTMによる磁性測定よりも有効な手法を見出すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現在の最大の課題は、平坦表面を如何に得るかということである。高温で金属電極を蒸着すると、内部に拡散してしまい、ヘテロ構造の物性を壊してしまう。一方で室温で蒸着すると平坦性が低下する。これらを克服するため、現在、半導体層の最上面に高ドープし、半導体層ををそのまま電極として用いることや、室温蒸着でも平坦に製膜可能な金属・蒸着条件の模索を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
測定精度向上のため、表面平坦化に時間を要し、研究計画が遅延した。また、当初予定よりも高精度に研究可能なシステムに一部切り替えたことで時間を要している。 電極蒸着用の膜厚測定システムに使いたいと計画している。
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