研究概要 |
今年度は, 主にR-123酸化物高温超伝導体(R:希土類元素)のR=La,Luについて単結晶ウィスカーの育成を行い, その超伝導特性の評価を行う予定であった. しかし, これまで研究を行ってきたR=Pr,Ndのウィスカー関して, 特異な結晶成長が起こることが明らかとなり, これに関する研究を推進した. 従来R-123ウィスカーは, a/b軸方向に成長することが知られているが, 今回, R=Pr,Ndにおいてのみ, これがc軸になることが明らかとなった. 本来R-123酸化物高温超伝導体は, 結晶成長速度がa/bとc軸方向で大きく異なり, a/b軸が圧倒的に早いことから, ウィスカーの場合も成長方向(長手方向)がa/b軸になるのが, 妥当であると考えられていた. しかし, 本研究において, 本来結晶成長速度が遅いc軸がウィスカーの成長方向(長手方向)になったことから, これまでの知見では説明できない現象が見出された. この現象は, RがPr,Ndで確認されており, これらはイオン半径が大きいという特徴から, Rサイトのイオン半径がこの現象に関わっていると考え, イオン半径がNdの次に大きくR-123ウィスカーの育成が確認されているSmについて, NdとSmを固溶した系のR-123ウィスカーを育成し, 成長方向を調べた. この結果から, やはりイオン半径の大きさがウィスカーの成長方向に関連していることが明らかとなった. 今後は, イオン半径がさらに大きく当初ウィスカー育成を行う予定であったLaについてR-123ウィスカーの育成を試み, その成長方向を調べるとともにR=Luについてもウィスカー育成を試み, R-123ウィスカー育成全般について明らかしたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要に記述したとおり, 当初は, R=La,LuのR-123ウィスカーの育成を行う予定であったが, これまで研究を行ってきたR=Pr,Ndにおいて結晶成長の方向が変化するという特異な現象が見出されたため, これに関する研究を推進した. このため, R=La,Luについての研究を行うことができず, 研究実施計画より, 遅れる結果となった. 今回のような特異な現象は, 結晶学的にも興味深い内容であったことから, 当初の研究計画を若干変更して, この研究を推進した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度遂行する予定であったR=La,Luに関するR-123ウィスカーの研究を行うとともに, 成長方向が変化した, Pr,Ndについて育成ウィスカーの結晶学的な評価(X線回折による方位の評価)や超伝導特性(特に電気伝導に関する評価)を行いたいと考えている. また, 研究計画に記載した, 酸化物高温超伝導体以外の機能性酸化物単結晶としてBiFeO3またはCaMnO3のウィスカー育成も進めていきたいと考えている.
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