研究概要 |
R-123酸化物高温超伝導体(R:希土類元素)のR=La,Luについて単結晶ウィスカーの育成を行い, その超伝導特性の評価を行う予定であった. しかし, これまで研究を行ってきたR=Pr,Ndのウィスカーに関して, 特異な結晶成長が起こることが明らかとなり, これに関する研究を推進した. 従来R-123ウィスカーは, a/b軸方向に成長することが知られているが, R=Pr,Ndにおいてのみ, これがc軸になることが明らかとなった. 本来R-123酸化物高温超伝導体は, 結晶成長速度がa/bとc軸方向で大きく異なり, a/b軸が圧倒的に早いことから, ウィスカーの場合も成長方向(長手方向)がa/b軸になるのが, 妥当であると考えられていた. しかし, 本研究において, 本来結晶成長速度が遅いc軸がウィスカーの成長方向(長手方向)になったことから, これまでの知見では説明できない現象が見出された. この現象は, RがPr,Ndで確認されており, これらはイオン半径が大きいという特徴から, Rサイトのイオン半径がこの現象に関わっていると考え, イオン半径がNdの次に大きくR-123ウィスカーの育成が確認されているSmについて, NdとSmを固溶した系のR-123ウィスカーを育成し, 成長方向を調べたところ, Smが約73%固溶する領域まで, c軸方向の成長を確認した. さらに, Sm以外の希土類元素で実験を行った結果, Rサイトのイオン半径が0.97Å以上の領域でc軸成長することが明らかとなった. しかしながら, 当初の予定であったR=La,LuについてR-123ウィスカーの育成を試みたが, 本育成法では育成を確認するには至らなかった. BiFeO3およびCaMnO3についてTeおよびSb添加した前駆体を用いてウィスカーの育成を試みたが, ウィスカーの育成は確認できなかった. そこで, ウィスカー育成に用いた前駆体についてX線回折およびEPMAによる分析を行った結果BiFeO3やCaMnO3の目的物質の生成は確認できたが, ウィスカー状の結晶成長は確認できなかった.
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