本研究課題において主要な研究成果は以下の2点である。 (1)ヘテロエピタキシャル成長させたSrFeO2.8薄膜における高温領域での金属絶縁体転移の実現:人工超格子をはじめとした人工超構造を作製するうえで、構成要素となる薄膜の特性を理解することは非常に重要である。そこでパルスレーザー堆積法を用いて作製したSrFeO2.5単一組成薄膜において、室温以上の高温領域においてその構造及び輸送特性の評価を行った。600Kという非常に高い温度領域において金属絶縁体転移が発現するというバルク試料には見られない振舞いを示すことを見出した。高温X線回折及び放射光を利用した57Feメスバウアー分光測定から薄膜中の酸素量は元々の2.5から2.8へと増加しており、観測された600Kので金属絶縁体転移は鉄の電荷不均化に由来するものであることを明らかにした。 (2)ヘテロ界面における酸素原子変位の操作による新規ヘテロ界面の構築:ペロブスカイト酸化物から構成されるヘテロ界面において、走査型透過電子顕微鏡を用いた環状明視野結像法によって酸素原子位置の評価を行った。ヘテロ界面における酸素原子位置には自由度があり、ヘテロ界面における酸素原子位置を操作することによってペロブスカイト酸化物の物性制御が可能であることを実証した。さらにブラウンミレライト酸化物とペロブスカイト酸化物から構成されるヘテロ界面においては、ブラウンミレライトに見られる酸素欠損規則配列が消失した界面中間層が形成されることを見出した。また輸送特性評価から、界面中間層においては酸素欠損秩序の消失によって伝導性が発現していることが明らかになった。界面中間層における伝導性の起源について検討したことろ、酸素イオン伝導性発現の可能性もあることから、今後も継続して、調査を実施する予定である。
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