半導体素子の更なる高度集積化においてBeyond-CMOS技術開発が必要であり、本研究ではその関連研究をスピントロニクスの視点で目指した。IV族元素材料のうち、これまで達成されていないp型Si、p型Geおよびn型Geにおける室温スピン輸送を、スピンポンピングによるスピン注入及び、SiやGeに接合された非磁性金属の逆スピンホール効果を用いて達成することを目的とした。 初年度には提案の手法を用いて、p型Siの室温スピン輸送を世界で初めて達成した。また、p型Geへの室温スピン注入を達成した。p型Siの成果については、米国物理学会論文誌のPhysical Reivew Letters誌(Impact factor = 7.4)に掲載され、同時に同誌のEditor's Suggestionおよび、Physics誌にて紹介された(同論文は2013年度に第5回応用物理学会シリコンテクノロジー分科会論文賞を受賞した)。また招待講演2件、国際学会における口頭発表2件等を行った。p型Geの成果は応用物理学会論文誌のApplied Physics Express誌(IF=3.0)に掲載され、国際学会にて口頭発表1件等を行った。 最終年度は関連材料として金属Alに新たに着目し、その室温スピン輸送を本手法により達成した。また、スピン検出に必要なPdのスピンホール角の温度依存性評価に成功した。更に、そのPdの温度依存特性を用いることにより、p型Siのスピン輸送特性の温度依存性を明らかにし、今後の研究展開の指針を示した。金属Alの成果はNature Publishing Group論文誌のScientific Reports誌(IF=2.9)に掲載され、Pdの温度依存特性評価の成果はApplied Physics Express誌に掲載された。また、学会等における招待講演2件等を行った。
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