平成25年度は、Light-emitting electrochemical cell (LEC) を用いた有機半導体レーザーの実現を目指して、大電流密度下において高効率で発光させることを目指した。前年度までに高分子半導体と高い相溶性を示すイオン液体を見出し、1000 A/cm2 に達する大電流密度を実現したが、電流値の上昇に伴い発光効率が低下してしまった(Roll-off 現象)。本年度は、この現象が高電圧による膜中でのイオンのゆらぎに起因するものと考え、電圧を印加しながら冷却をしてイオンの動きを凍結する Frozen-junction 法を利用して Roll-off を抑制することを検討した。 一方で、冷却とともに高分子半導体層の導電性が低下してしまう。これを最小限にするために、比較的融点が高く、かつ高分子半導体と高い相溶性を有するイオン液体を探索したところ、ホスホニウム系イオン液体のアルキル鎖を制御することで融点が16℃と室温に近いものを見出した。実際のデバイスでは、-20℃でイオン液体の凍結が出来ることを確認して大電流密度の注入を行った所、1000 A/cm2 の大電流密度に至るまで、発光強度と電流密度に直線的な関係を得ることができた。このような特性は有機ELなどの他の有機発光デバイスでは実現が難しく、LEC の高導電性と光損失の少ない構造が可能にしたものであると考えられる。以上の結果、および昨年度に達成した薄膜からの光励起による発光増幅の結果は、本研究のLECが有機半導体レーザー実現に向けて極めて優れた素子であることを示している。一方で、本研究では共振器構造の導入が出来ていない。LEC 活性層は塗布形成が可能で微細加工も容易なため、ナノインプリント等の手法で共振器構造を導入し、光増幅に必要なしきい値を下げることが求められる。
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