研究課題
今年度は、(1)超音速希ガス原子線散乱によるグラフェンのモアレ様ポテンシャル分布の新規評価法を確立した。また、(2)モアレ様ポテンシャルを利用しない状態で、有機半導体薄膜の金属添加による構造制御を確立した。(1)非常に表面敏感な超音速希ガス原子線散乱で、基板とグラフェンの結合力定数に対応するデバイ温度を計測することが出来る。これを詳細に適用することで、デバイ温度の面内分布の情報が得られることがわかった。本年度は、基板と強く相互作用をしているグラフェンであるRu(0001)上のグラフェン(gr/Ru(0001)), 弱く相互作用をしているグラフェンであるPt(111)上のグラフェン(gr/Pt(111))及び分子間力で支持されているグラフェンとしてHOPGを例にとり、デバイ温度とその面内分布の計測を行った。その結果、各種の結合の度合いをデバイ温度として定量化することができた。さらに、その面内分布計測から、相関結合の面内分布に関する情報を取り出すことが出来た。(2)モアレ様ポテンシャル分布を利用した有機半導体の制御においては、電気陰性度の著しく異なる二物質のパターニングを目指す。そのために、本年度は表面ポテンシャルが平坦な場合の二物質系の形成するパターンに関して調べた。ここでは、電子アクセプター性の有機半導体材料と電子供与性のアルカリ金属を混合した系のパターン形成を調べた。この時、有機分子材料としてピセンやコロネン等芳香族系分子と、より複雑で実用的なフタロシアニンを用いた。この結果、いずれの分子においても、アルカリ金属添加により分子膜が新たな秩序構造に再構成することが明らかになった。また光電子分光計測により、新たな構造形成に伴い、特異な電子状態の形成が確認された。今後、モアレポテンシャルを利用して、構造制御を行うことで、電子状態の更なる変調が可能であることが示唆された。
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