研究課題
現在の代表的なデバイス材料であるシリコンに比べて、フレキシブルでプリンタブルな次世代の電子デバイス材料として、有機半導体が注目を集めている。実用化へ向けた課題の1つに高移動度化がある。しかし現状では、その基礎的伝導機構すら明らかになっていない。さらに未知な有機半導体の伝導機構の解明は学術的にも興味深い問題である。分子間の弱いファンデアワールス結合からなる有機半導体のバルクな伝導物性を理解するには、ミクロな分子間相互作用を考慮する必要がある。そこで私は、バルクサイズの有機半導体の伝導機構を原子・分子レベルから解明するために、数千万個の分子からなる結晶の伝導物性を量子論に基づいて解析できる大規模量子伝導計算法「時間依存波束拡散法」を開発した。電子の量子波束ダイナミクス計算と、結晶格子の動的歪みを表す古典分子動力学計算を連立させることにより、有機半導体に特徴的な動的ポーラロンの記述に成功した。さらに、第一原理計算から個々の材料の物性パラメータを導出する方法も確立し、ペンタセンやルブレンなどの材料の電子物性・伝導物性の定量的比較を可能にした。これを用いて、キャリア移動度の温度依存性や空間異方性の起源などを明らかにした。また最終年度では、これまで困難であった磁場下でのHall効果の大規模計算にも成功した。これによってダイナミカルな格子歪みがHall効果に及ぼす影響も定量的に議論できるようになり、実験結果と比較・検討することで、伝導機構の微視的理解を進めることができた。
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Physical Review B
巻: 88 ページ: 205208
10.1103/PhysRevB.88.205208
http://www.bk.tsukuba.ac.jp/~ishii/index.html