研究課題/領域番号 |
24760025
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
佐久間 洋志 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40375522)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プローブ顕微鏡 / 走査トンネル顕微鏡 / 磁気抵抗効果 / スピントロニクス |
研究概要 |
先端が鋭く尖った金属線(プローブ)を金属薄膜に1 nm程の距離まで近付けると,接合面積が1 nm2程のナノトンネル接合を形成することができる.このナノトンネル接合に磁場を加えて,電気抵抗の変化を測定したところ,数万パーセントにおよぶ超巨大な抵抗変化(磁気抵抗効果)を観測した.このような超巨大磁気抵抗効果は基礎物理としてももちろんのこと,磁気記録等への応用においても非常に重要であり,本研究ではそのメカニズムを明らかにすることを目的とする. 平成24年度においては,電場によるナノ構造の形成について検討した.超巨大磁気抵抗効果を観測した条件においては電界・電流密度が非常に大きく,プローブと薄膜の間で原子の移動が起こり,トンネル接合の形状が特異なナノ構造となっている可能性がある.この可能性を調べるために,試料上のある位置にプローブを近付ける,遠ざけるといった測定を繰り返したところ,この動作を繰り返すにつれて電流の変化が鋭くなり,表面状態が変化していることが示唆された.また,プローブと薄膜の距離やトンネル接合の面積を変化させて磁気抵抗効果への影響を調べたところ,距離が遠いほど,また接合面積が大きいほど磁気抵抗が大きい傾向を見出した. しかしながら,形状測定および磁気抵抗の測定に時間がかかり,その間にナノメートルオーダーで試料が動いてしまうため,同じ位置で様々な測定を行うことが難しいという問題が生じた.この問題を解決するために,形状測定の高速化には再構成可能な計測器(FPGA)を,磁気抵抗測定の高速化には応答の早い直流電源を導入した.既に磁気抵抗測定の高速化は完了しており,形状測定の高速化も近く達成できる見通しである.この改良により,ナノメートルオーダーの測定位置の再現性を実現でき,超巨大磁気抵抗効果のメカニズム解明に一歩近づく見通しである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度においては,電場によるナノ構造の形成の有無について検討することを予定していた.実験により,いくつかの新しい知見を得たものの,結論には至らなかった.これは,さらに研究を進めるために解決しなければならない問題が見つかり,そのために時間を費やしたためである.しかしながら,この問題はほぼ解決しており,従来以上にユニークな機能を有する独自の実験装置となった.これにより今後研究が大きく進展することが期待される.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は昨年度から引き続き,電場によるナノ構造の形成について検討した後,当初予定していた残り二つのメカニズム候補である,磁場による原子の移動と新奇スピン依存伝導現象の可能性について検討する.前者においては,多数の測定点における電流-電圧特性を測定・解析する必要があるが,昨年度導入した再構成可能な計測器(FPGA)により電流-電圧特性も高速になり,確実に研究を進めることができると予想される.後者においても実験手法は既に確立した技術が多いため,順調に進められると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
現在用いているソレノイド電磁石は,0.07テスラの磁場を発生させるのに10 Aの電流を必要とし,大きな発熱を生じるため,数秒以上の連続使用は不可能である.一定の磁場で電流-電圧測定を行うために,ヨーク付きの電磁石を用意する.また,様々な物質の薄膜を作製するために,それぞれの物質のスパッタ・ターゲットを用意する.
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