研究概要 |
室温で液体状の塩であるイオン液体は、難揮発性・難燃性・高い電気化学的安定性など、水や有機溶媒には無い優れた特長を有することから、様々な応用研究が進められている。電気化学はその一つであるが、イオン液体を用いた電気化学現象には未解明な点が多く存在する。本課題では、われわれが開発を進めてきた、音叉型水晶振動子センサを有する周波数変調原子間力顕微鏡 (FM-AFM) により、イオン液体-電極界面の電気化学挙動の解明に取り組んだ。平成24年度までにイオン液体中の微量水分の影響を除去可能な真空電気化学FM-AFMシステムを構築し、これをもとにイオン液体-電極界面の電気化学挙動を調査した。イオン液体1-butyl-1-methylpyrrolidinium tris(tentafluoroethyl)trifluorophosphate ([Py1,4]FAP)とAu(111)との界面を観察した結果、0.9 nm周期の層状の構造が可視化され、イオンが周期的に配列していることが示された。さらに、電極電位の変化に伴う、緩和時間の極めて遅い、界面でのイオンの組み替えを直接可視化することに成功した。また、対照実験として、電荷を有しないKCl単結晶(100)面と[Py1,4]FAPとの界面についても、同様にFM-AFMで分析を行った。その結果、Au(111)との界面と異なり、層状構造は全く観察されなかった。このことは、観察された層状構造が、界面電気二重層に由来することを示している。
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