研究代表者は平成25年10月1日より、科研費応募資格の無い民間企業に就職し、科学研究費助成事業の補助事業を廃止したので、平成25年9月30日までの研究の成果を報告する。 所属した研究機関では、プラズマCVD法によるロールtoロール グラフェン高速製膜技術を開発しており、プラズマCVDグラフェンの高品質化をターゲットとして研究を推進した。グラフェン成長基板としては、主に銅基板を使用するが、プラズマ照射中は基板の温度が上がりすぎるために、基板が一部溶解して、グラフェンの品質が劣化する。そのため銅基板よりも融点が高い銅ニッケル合金を使用することで、基板の溶解が抑えられ、グラフェンの品質が向上する可能性が示唆された。 また、超平坦化処理を施した金属基板上に成長させたグラフェン膜は、金属基板を化学的に溶解することで、基板から剥離することができるので、金属上に成長させたグラフェン膜を、透過電子顕微鏡グリッド上に展開した状態で、自己保持膜として取り出した。これまでの金属基板の化学的溶解によるグラフェン膜の剥離は、転写過程でグラフェン膜に欠陥が生じやすく、グラフェン表面が汚染されやすい。そこで、超高真空中でグラフェン成長中の基板に、外部から種結晶に相当するものを接触・融解させて引き上げることで、機械的にグラフェン膜を金属基板から剥離することを検討した。 また、透過電子顕微鏡での自己保持グラフェン膜への電子線照射耐性を評価した。特に転写プロセス中にグラフェン表面に付着する不純物(Siなど)周辺から優先的にグラフェンが損傷を受けることが、走査透過電子顕微鏡その場観察・ラマン分光によって明瞭に示された。
|