研究課題/領域番号 |
24760036
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
溝上 陽子 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (40436340)
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キーワード | 色覚 / 彩度知覚 / 順応 / 視環境 / 画像 / 視覚心理物理学 |
研究概要 |
本研究では、自然環境で起こり得る環境の彩度変化と人工的で不自然な環境の彩度変化によって順応効果に違いが生じるかについて検討している。 自然な環境の色変化が彩度順応効果に与える影響を評価するため、画像を用いた彩度順応実験を中心に行った。自然環境で起こり得る変化として、霧のかかった状態または眼内散乱光の増加による視界の彩度低下した状態を再現するため、フォギーフィルターを用いた。実験では、フィルターを通して観察した画像の彩度知覚を調べた。用いた画像は屋内外の様々な光景を含む複数の自然画像である。被験者は、まずフィルターを通して順応画像を数分間観察し、その後再順応をはさみながら、様々な彩度を持つテスト画像の鮮やかさの印象を評価した。これにより、各順応条件における画像の自然な彩度範囲を求めた。特に、順応時間が順応効果に与える影響に注目して検討するため、フィルター装着後0秒から120秒後までの彩度知覚の変化を測定した。フォギーフィルターにより視界の彩度が低下するにもかかわらず、画像の自然な鮮やかさの知覚はほとんど変化しないことが示された。さらに、継時的な順応効果よりも瞬時の補正効果の方が大きいことが分かった。 また、画像の特性が彩度順応の効果に与える影響について検討する実験も行った。ここでは、特に画像内の物体・風景の認識と画像の空間周波数特性の影響について注目した。物体認識の程度を崩した画像、また空間周波数特性を変えた画像を用いて調べた結果、自然画像で最も順応効果が高く、物体認識と空間周波数特性のいずれかが自然画像と異なる場合には効果が低下することが分かった。これは、彩度順応には、視覚系の比較的低次レベルから高次レベルまで、複数のメカニズムが寄与していることを示している。 これらの結果は、彩度順応機能は自然な環境における彩度変化に対して活発に働くことを裏づける重要なデータといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した実験全てを完了する事はできなかった。ただし、研究目的には含まれるが、当初の計画に入れていなかった実験を進めることができた。したがって、「研究の目的」に対する達成度という総合的な観点から考えると、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究目的の環境の色変化の仕方が彩度順応効果に与える影響の検討を、実験条件を加えて継続し、より総合的な分析を加える。また、まだ行っていない実環境における実験も進めていく予定である。成果は、国内・国際学会で公表する。
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