研究課題/領域番号 |
24760037
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 泰友 東京大学, ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構, 特任助教 (90624528)
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キーワード | 量子ドット / フォトニック結晶 / 二光子過程 / 非線形光学 / ナノレーザー |
研究概要 |
今年度はナノ共振器中における二光子過程の基礎的検討として、前年度に引き続き量子ドットをゲインとしたフォトニック結晶ナノ共振器レーザーにおける非線形光学効果について実験理論の両面から検討を進めた。 まず、モノリシックに作製した様々な発振波長を有する単一モードナノレーザーを用いて光学実験を行った。実験条件は固定したまま、各々の試料に対して光キャリア注入を行い、980-1260nmの範囲に共振波長を持つナノ共振器すべてからレーザー発振を観測した。同時に、その共振器内生成光を用いた非線形第二高調波を490-630nmの範囲で観測し、その高い非線形波長変換効率(最大10%/W)を確認した。次に、多モード発振が可能な単一ナノレーザーを用いた和周波発生についても同様の実験を行い、単一実験条件下において多数波長の和周波発生が可能であることを示した。これらの成果は、位相整合条件に縛られないナノ共振器中ならではのものと言える。また、第二高調波発生の近視野像を取得しその偏光を解析することで、ナノ共振器内における非線形光学効果のマイクロスコピックな起源を探った。 さらに、二光子過程(特に周波数二倍化)における光の統計的性質の影響を調べた。マスター方程式を用いた理論により、第二高調波発生効率が二次のコヒーレンス関数の値に比例することを示し、そのことを単一モード発振ナノレーザーを用いた実験により実証した。この成果は、二光子状態の統計性を共振器内で簡易に調べる手法として活用することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多数量子ドットを用いた実験により、ナノ共振器中の二光子過程について重要な知見を得ることに成功した。一方、単一量子ドットを用いた実験に関しては、結晶成長装置の不具合等があり、当初の予定に比べて少し進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
結晶成長装置は近日中に立ち上がる。現在までに結晶成長の基礎的な条件出しを終えているために、立ち上げ後直ぐに試料の作製に取り掛かることができる。単一量子ドット試料の作製後、ナノ共振器を用いた光学実験に迅速に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に、量子ドット-フォトニック結晶結合系を作製し2光子自然放出の観測及びその基礎特性の評価を行い、国際学会等で発表する予定であったが、量子ドット成長装置のトラブルにより試料作製用基板の供給が止まったため、計画を変更し、主に共振器内光子の量子状態の2光子過程への影響を調べる理論解析を進めたため、未使用額が生じた。 量子ドット-フォトニック結晶結合系の作製および評価と国際会議等での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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