研究課題/領域番号 |
24760038
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
渡邉 恵理子 電気通信大学, 先端領域教育研究センター, 助教 (20424765)
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キーワード | ホログラフィ / 光計測 / 細胞検査 |
研究概要 |
本研究では,3次元光位相計測システムとして,レンズレスフーリエ変換デジタルホログラフィック顕微鏡(LF-DHM)を試作し,細胞検査応用への基礎検討を行った.下記に概要を示す. デジタルホログラフィック顕微鏡における回折計算では,高速フーリエ変換を利用したフレネル回折計算が利用されることが多いが,位相重畳ノイズは顕微位相計測における重大な課題の一つになる.本研究では,高精度に広い面積の位相計測が可能なレンズレスフーリエ変換型顕微計測に着目し,その結像条件を利用することで,1回の高速フーリエ変換でのフレネル回折計算においても,振幅,位相情報ともに高精度計測が可能な新設計法を確立した.新設計法により試作したLF-DHMを評価したところ,空間分解能1 μm以下,計測面積は最大2 mm × 2 mm,位相分解能5 nmを得ることに成功した.さらに奥行き方向に対しコンピュータ上で再生距離を変えることで,2次元位相情報に加えて3次元位相計測を実現できることを確認した. 次にデジタルホログラフィック顕微鏡における高精度な位相像の自動取得に向けてオートフォーカス手法の提案と実証を行った.位相顕微像を計測する際,サンプル設置時において~数100μm単位でのサンプルの位置ずれが起こる.この位置ずれは精密な検査等において利用する場合は,細胞の浮遊状態や接着条件などに応じたエラーとなるため,最適なフォーカス距離を自動的に探す必要がある.今回,透明位相物体の強度分布に着目したオートフォーカス手法を提案し,区画に分けた焦点距離マッピングを行うことで広視野での高精度位相計測を実証した.さらに,細胞検査へ向けた基礎検討として,再生医療に利用されている角膜上皮細胞シートの計測を行い,欠落検査等への応用の可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた3次元光位相計測システムの試作に成功し,細胞検査応用に対する基礎的な実証も進展した.
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今後の研究の推進方策 |
今後、3次元の定量位相情報に加え,新たな光学物性や,力学物性などを計測可能な非染色・非接触断層顕微解析システムを構築を目指す.さらに,異常・正常細胞検査への適用を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では従来システムでは計測困難であった細胞などにおいても、欠損や異常・正常などの識別可能という、従来にない新しい知見を得た。そのためより多くの細胞での追加実験が必要である。当初の研究計画では、3次元化に伴い複数デバイスでの制御を行う必要があり、その制御ソフトウエアを購入する予定でいた。しかしその部分を自作し、その金額を次年度への追加実験に利用する。 3次元光位相計測システムの構築に対するシステム改善と多くの細胞での追加実験に利用する。使途内容としては、ハードウエアとしての光学系改善、ソフトウエアとしては高速化を行う。具体的には細胞用シャーレや制御デバイスの購入、論文投稿費用、論文校正費用、さらにその評価にかかわる人件費に利用する。
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