本年度は,昨年度に提案したホログラフィック顕微鏡におけるオートフォーカス手法を改良し,広視野でより高精度な3次元位相計測システムを実証した.このオートフォーカス手法により,垂直方向において異なる位置で浮遊しているような細胞の位置の特定が可能となった. 高精度な広視野計測では,サンプル設置時における~数100μm程度微小なずれや傾きにより,焦点距離が変動しぼけが生じる.この影響により,細胞が固定され,焦点位置が同一面内であったとしても,再生距離が最適な焦点位置からずれてしまい,再生像が劣化する.そこで,昨年度提案したオートフォーカス手法を利用し,最適な焦点距離を検討した.このオートフォーカス手法は,透明位相物体において強度分布の変化が微小であることに着目し,強度分布のヒストグラムの上位と下位領域の平均強度の差を算出し,その最小値から焦点距離を推定する手法である. また,物体はある一定の大きさを持つので,光軸中心からずれた位置から伝搬する物体光によるぼけも生じる.そのため,撮像面の光軸中心からの各位置における位相差を算出し,補正する必要がある.これらを考慮し,直径18 μmのプラスチックビーズをサンプルとし,計算から求まる位相差と,計測範囲の中央から面方向(XY軸)に数百μm単位でずらした際の,焦点の合う再生距離Zを比較した結果,オンフォーカス位置が計算値通りの曲線上にあることを確認した. 本オートフォーカス手法により,サンプル設置位置のエラーや,垂直方向において異なる位置で浮遊しているような細胞位置の特定を自動的に行うことが可能となった.
|