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2012 年度 実施状況報告書

スピン間相互作用を利用した光制御によるスピン回転

研究課題

研究課題/領域番号 24760040
研究機関静岡大学

研究代表者

伊藤 哲  静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任助教 (70425099)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードスピン / 交換相互作用 / 有効磁場 / 量子井戸 / k・p摂動
研究概要

スピンを量子メモリーや量子ビットとして利用し量子演算を行うには,自由にスピンを回転させ,量子状態を制御する必要がある.該当年度は空間分解能が高く,高速制御可能な光パルスのみで(外部磁場なしで)のスピン回転の実現を目的とし,光制御によるスピン生成と量子構造の関係解明を行った.
■直線偏光励起によるスピン重ねあわせ状態の形成
GaAs/AlGaAs量子井戸中に直線偏光を励起し,電子・正孔スピン重ね合わせ状態の観測を行った.この時,ほぼ共鳴励起の条件でフォトルミネッセンス(PL)の測定を行うことにより,価電子帯のバンドミキシングに起因するスピン重ね合わせ状態の緩和が起こりにくい状況での観測を行った.偏光時間分解PL測定を行うことにより,直線偏光励起によりスピン重ねあわせ状態が形成されることが確認できた.これは励起方向とは異なる方向にスピンが形成されたことを示し,スピン間相互作用を利用したスピン回転を実現する上で重要な知見を得たことを意味する.
■k・p摂動計算によるスピン選択励起のバンド構造依存性の解明
上記測定に平行して,k・p摂動法によるバンド構造計算を行い,スピン回転に有効なスピン選択励起を行うための条件解明を行った.上記の測定は基本的にPL測定であり,バンド端のスピン状態を反映する.一方で,次年度に計画している高速スピン回転の時間分解測定においては,ポンプ&プローブ法により非線形効果を利用した時間分解測定を行うため,ポンプ光とプローブ光それぞれが励起するエネルギーにおけるスピン光学遷移の選択則を整理する必要がある.これまでは,バンド混合効果が存在しない,バンド端のみで解析が行われていたが,該当年度で行った計算ではバンド端以外でのバンド混合を明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

空間分解能が高く,高速制御可能な光パルスのみで(外部磁場なしで)のスピン間相互作用を利用したスピン回転の実証及び,光制御によるスピン生成と量子構造の関係解明を行うためには,(1)半導体量子構造に円偏光励起により方向の異なる2つのスピン系を励起し,片方のスピンの有効磁場による他方のスピン回転の観測を行い,(2)より効率的に2つのスピン系を励起するために必要な試料構造をバンド計算により明らかにすることが必要である.
(1)に関しては当初計画とは異なる方法ではあるが,直線偏光励起をすることにより,方向の異なるスピンを生成ることができることを実験的に明らかにしており,研究の目的達成に重要な成果が得られている.(2)に関してのバンド端以外での正孔状態の計算も行なっており,これらの成果を活用すれば,最終的な目標である,光制御によるスピン回転を達成できるものと思われる.

今後の研究の推進方策

ポンプ&プローブ測定法を利用して,光パルスのみで(外部磁場無しで)のスピン回転の観測を行う.この時,該当年度に得られた直線偏光励起によるスピン形成に関する知見を利用して,ビーム入射方向と異なる方向にスピンを励起し,このスピンが作る有効磁場によるスピン回転の観測を試みる.同時に,バンド構造の解析も行い,スピン緩和,交換相互作用,スピン回転の関係を考察する.

次年度の研究費の使用計画

該当年度は研究計画とは異なり,時間分解PL測定を中心に実験を研究協力者の所有施設で行ったため,申請者の所有施設に光学系の構築が進んでいない.次年度はポンプ&プローブ測定系構築に必要な光学部品,計測機器購入に研究費の使用を計画している.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] GaAs量子井戸における正孔スピン重ね合わせ状態のダイナミクス評価2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤哲,後藤秀樹,市田 正夫,安藤 弘明
    • 学会等名
      2013年 第60回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      神奈川工科大学 (神奈川県厚木市)
    • 年月日
      20130327-20130330

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公開日: 2014-07-24  

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