研究課題/領域番号 |
24760043
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高野 恵介 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 研究員 (70583102)
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キーワード | テラヘルツ光源 / メタマテリアル / 光伝導アンテナ |
研究概要 |
分割リング共振器(Split-Ring Resonator, SRR)は、任意の屈折率をもつメタマテリアルの基本要素として知られている。SRRは、切れ目をもつリング形状をしていて、リングに対して十数倍長い波長の電磁波に対して共鳴する。このような微小な共振器を光源近くに配置することによって、放射光スペクトルを変調することができる。光伝導アンテナ近傍にSRRを配置したときの放射スペクトルの変化を、時間領域差分法を用いて解析した。 ダイポール型の光伝導とSRRの距離や向きによって、SRRの共鳴周波数付近のスペクトル形状が変化し、放射効率が増強あるいは抑制され、非対称なスペクトル形状となる。このスペクトル変化は、Fano干渉により説明することができる。Fano干渉は、広い周波数幅をもつ共振と、狭い周波数幅の共振の2つの共振の相互作用によって生じ、両者の結合の強さによってスペクトル形状が変化する現象である。広帯域な共振を持つダイポール型アンテナと、狭帯域な共振をもつSRRの共振が、相対的な距離を変えることによって結合の強さを変え、放射スペクトル形状を変化させている。2つの共振器の結合が最も強いときには、ひとつの共振器として振る舞い、放射スペクトルが対称形となり放射が抑制される周波数がなくなる。一方で、二つの共振器の結合が小さいときには破壊的な干渉により、SRRの共振周波数付近の放射効率が抑制されるのみとなる。SRRとダイポールとの相対位置による放射スペクトル変化の機構を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導波路あるいは光源近傍に微小な共振器を置いた際の電磁波伝搬と放射スペクトルの変調について明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
光源近傍に微小な共振器を置くことで、スペクトルが大きく変調されるため、同様に大きく放射パターンを変化させることができるのではないかと期待した。当初ファイバー結合させた光伝導アンテナの走査によるテラヘルツ波放射パターンの測定を考えていたが、電磁界シミュレーションの結果、劇的な放射スペクトル変化は生じないことがわかった。そこで、平面テラヘルツ導波路を伝播するテラヘルツ波の操作により注力したい。昨年度明らかにした共振器間の干渉を利用する新たな構造を提案し、実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策に記述したように、放射パターン測定用の光学系の構築に必要であった自動制御ステージや光学素子の調達を見直したため、次年度使用額が生じた。表面抵抗の高い光伝導性基板と、電極描画に用いる超微細インクジェット工法にかかる消耗品費、測定光学系の改良と維持に使用予定である。 表面抵抗の高い光伝導性基板と、電極描画に用いる超微細インクジェット工法にかかる消耗品の購入、および測定光学系の改良と維持に使用予定である。
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