研究課題/領域番号 |
24760055
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
谷口 茂 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00626880)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 衝撃波工学 / 実在気体 / 数理工学 / 数値解析 / 非平衡熱・統計力学 / 拡張された熱力学 / 非線型波動 / 濃密気体 |
研究概要 |
本研究の目的は、実在気体中の衝撃波現象を数理・数値的に解析し、その性質を明らかにすることにある。本年度を3年に渡る研究の基礎づくりの年度と位置付け、以下の研究を行った。 ・解析の基礎となるバランス方程式の導出:従来の非平衡熱力学理論では解析できない、強い非平衡現象を解析するために提案された、「拡張された熱力学」と呼ばれる理論がある。最近、多原子分子希薄気体や濃密気体にまでその適用可能範囲を広げる試みに成功した。これを用いて、解析の基礎となるバランス方程式の導出を行った。得られた関係式は、よく知られているMeixner理論の拡張になっていることを示した。 ・線型波動の解析:理論の妥当性・有用性を確かめるため、線型波動の解析を行った。分散関係を導出し、超音波の伝播速度と減衰係数を求めた。縦波の場合、従来のNavier-Stokes-Fourier理論では説明できない高振動数領域まで、水素気体中の超音波の実験結果を説明することに成功した。また、気体中の横波の可能性についても議論を行った。 ・衝撃波構造の解析:線型波動の解析を通して理論の有用性が確かめられたので、衝撃波構造の解析に着手した。衝撃波は典型的な非線型波動であり、その解析には数値手法が重要になる。その数値解析プログラムの開発を行った。二酸化炭素中の衝撃波構造に関して実験結果との比較を行ったところ、一致は良好である。この結果は、本研究の手法が二原子分子気体に限らず一般的な多原子分子気体に対して有効だということを示唆している。 ・相転移をともなう衝撃波の解析:最近発見された、新奇な衝撃波現象(compressive upper shock)についてさらなる解析を行った。この衝撃波は、マッハ数が増加するにも関わらず密度が減少するという全く新しい圧縮衝撃波である。この現象の詳細な分類を行い、その性質を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、研究が順調に進展した。理論・数値解析から得られた結果を実験結果と比較したところ、その一致は極めて良好であり、従来の研究に対する優位性が明確になってきている。以下の点が研究の遂行に対して重要な役割を果たしている。 ・「拡張された熱力学」理論:当初予想していた以上に、この理論によって新たに解析できるようになる非平衡現象が多いことが明らかになった。例えば、この理論を用いることにより、従来の理論では求めることが困難だった、体積粘性率を正確に見積もることにも成功し、気体物性の理論にも貢献ができた。 ・数理的な観点からの解析:衝撃波構造の解析に際し、衝撃波の伝播速度が最大の特性速度よりも大きい場合には、滑らかな衝撃波構造は存在できなくなり、不連続面(いわゆるsub-shock)が生じることが厳密に証明されている。この不連続面に対するランキン-ユゴニオ関係を求めることにより、衝撃波構造の詳細な性質が分かると同時に数値解析プログラムの妥当性も異なる観点から検討することが可能となった。 ・数値解析プログラム:本研究では、双曲型のバランス方程式系を精度よく数値積分する必要がある。衝撃波構造の解析では、sub-shockが生じる場合、滑らかな衝撃波構造と不連続面が混在し、計算が不安定になりやすいので、計算途中で破綻しない数値解析法を用いることが必須となる。本研究において、このような数値解析プログラムをすでに構築することができたので、このプログラムを基礎にして研究を進めることができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において、今後の研究の確かな基盤作りができており、解析結果も良好である。今後は、築いた基盤をもとに研究をさらに進めるとともに、研究成果を広く報告し、関連研究者と交流することにも注力する。具体的には、以下の推進方策をとる。 ・計算機環境の整備:本研究課題では、数値解析が重要な役割を果たしている。本年度では研究に必要な計算機環境の基盤を作ることができた。今後の研究をより実り多いものにするため、来年度も本年度に引き続き計算機環境をさらに充実させる。 ・関連研究者との交流:国内外の学会に参加し、得られた結果を報告するとともに、関連研究者と議論を行う。また、海外の共同研究者のもとを訪問し、お互いの得られた結果について議論を重ね、研究の方針を確認するとともに研究の進展を加速させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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