研究課題/領域番号 |
24760055
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
谷口 茂 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00626880)
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キーワード | 衝撃波工学 / 実在気体 / 数理工学 / 数値解析 / 非平衡熱・統計力学 / 拡張された熱力学 / 非線型波動 / 濃密気体 |
研究概要 |
本研究の目的は、実在気体中の衝撃波現象を数理・数値的に解析し、その性質を明らかにすることにある。前年度の研究から、「拡張された熱力学(ET)」理論が本研究の解析に有用であることが分かった。本年度は、このET理論を基礎にして、実在気体中を伝播する各種の波動や、多原子分子気体の性質の解析を行った。具体的には、以下の成果を得た。 ・線型波動(超音波)の解析:ET理論に基づく分散関係を前年度に導出した。この関係を用いて、超音波の伝播速度と減衰係数を求めた。分子の回転自由度のみが重要となる低温領域から、回転自由度に加えて振動自由度が重要となる高温領域に至るまで、希薄な水素気体中を伝播する超音波の実験結果を説明することに成功した。超音波に対する核異性体効果についても明らかにした。 ・衝撃波構造の解析:ET理論を用いて、多原子分子希薄気体中を伝播する垂直衝撃波の衝撃波構造(衝撃波面内部の強い非平衡状態における物理量の空間分布)を解析した。解析には、前年度に独自に作成した数値解析プログラムを用いた。マッハ数が1から増加するにつれて、衝撃波構造が変化することが知られていたが、この変化を統一的に説明することに成功した。この理論予測は二酸化炭素気体中の衝撃波構造の実験データとよく一致している。ET理論の観点から、従来のBethe-Teller理論の批判的検討も行った。 ・多原子分子希薄気体に対するET理論の単原子分子極限の解析:最近提案した、多原子分子希薄気体に対するET理論は、動圧が存在しない単原子分子希薄気体に対するET理論を特別な場合として含むことを示し、理論的問題点を克服した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、研究が順調に進展した。以下の点が研究の遂行に対して重要な役割を果たしている。 ・「拡張された熱力学(ET)」理論:最近提案した、多原子分子希薄気体および濃密気体に対するET理論の従来の理論に対する優位性が示された。この理論を用いることにより、従来の理論の問題点も明確になっており、多くの未解決な課題の解決に向けて、活発に研究を進めることができている。 ・数値解析プログラム:前年度に独自に作成した数値解析プログラムを用いることで、衝撃波構造などの数値解を精度よく求めることができており、数値解析上の困難を感じることなく研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度および本年度において、順調に解析結果が積み上げられてきており、関連研究者の注目も集めている。来年度は、「拡張された熱力学」理論に基づく衝撃波構造の解析をさらに進めるとともに、結果を論文にまとめて研究成果を広く報告する。具体的には、以下の推進方策をとる。 ・国内外の学会に参加し、得られた結果を発表するとともに、関連研究者と議論を行う。 ・国内外の共同研究者のもとを訪問し、お互いに得られた成果を議論するとともに、この研究をさらに発展させるために今後の展望についても議論を行う。
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