研究課題/領域番号 |
24760058
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
柳澤 大地 茨城大学, 理学部, 助教 (70611292)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 待ち行列 / ゲーム理論 / 群集運動 / 数理モデル / アプリケーション |
研究概要 |
A. モデル作成・シミュレーション・理論解析:1. 最もシンプルなモデルとして、人や車といった「エージェントが列に並ぼうとする確率」を新たに導入した物資供給待ち行列モデルを作成し、その定常状態の確率分布を理論解析によって求めることができた。2. 離散時間のモデルにおいて、分散をシンプルにコントロールする方法を開発した。この方法は待ち行列におけるばらつきの影響を考慮する際有効である。3. 周期系ASEPにおいて、止まっている時間、つまり待っている時間が与えるデメリットを考慮した指標を開発した。これは物資供給型待ち行列での消費燃料を考えることに応用できる。 B. 実験:1. 小規模な歩行実験を複数回行い、大規模な実験を行うための方法を修得した。また実験から逆方向に人が歩いているときのデータを獲得し、流量を調べることができた。2. コンピュータを用いた実験を行い、データの解析方法等を修得した。これは今後大規模な実験を行う際に効率よくデータ解析を行うことに生かすことができると考えられる。3. アンケート調査を行い、その解析方法を修得した。これは人がどのようなときにストレスを感じるかを調べ。モデルのパラメータを決定するに役立つと考えられる。4. スマートフォンアプリ作成の基礎を修得した。これにより、アプリを使用した実験を残りの期間で行うことが可能になった。 C. 学会発表・論文の出版:1. 国内学会で三件の発表を行い、国際会議で二件の発表を行った。2. 英文雑誌に論文が二編掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A. モデル作成・シミュレーション・理論解析:【研究実績の概要】に記載したように、昨年度の研究により、モデルの定常状態の解を求め、分散をコントロールする方法や燃料消費を表すことに応用できる指標を開発することができた。今年度はこれらを組み合わせることによって、研究を進展させることができると考えられる。 B. 実験:【研究実績の概要】に記載したように、昨年度の様々な取り組みにより、多くの実験手法を修得することができた。今年度はこれらを応用することにより、より効率よく多くのデータを獲得することができると考えられる。 C. 学会発表・論文の出版:【研究実績の概要】に記載したように、標準的な回数の学会発表、論文の出版を行うことができた。昨年度の成果でまだまとめていないものもあるので、今年度も順調に研究成果を公表することができると考えらえる。
|
今後の研究の推進方策 |
モデルの研究としては、保有する物資の効果をH24年度のモデルよりも精密に取り入れ、行列に殺到したことによって物資の保有量がどれだけ不均一になってしまうかということや、行列への殺到が起こらなければ失われなかった物資の総量について調べる。また心理効果や歩行者ダイナミクス、待ち行列の制御方法など、物資供給待ち行列モデルをより実用的なものにするための理論的研究にも取り組む。実際の人による実験も行う。物資供給待ち行列の実験はできるだけ現実に近い人の心情を再現する必要がある。そこで実験経済学の方法を応用し、被験者が実験内でゲームを行い競い合うことによってそれを実現する方法を考えている。具体的には、被験者全員にタイマーを配布し、そのタイマーの残時間を保有物資と考え、実験終了時に残時間が大きい被験者から順に順位をつけていく。実験開始と同時にタイマーの時間は減少していき、物資補給所でタイマーの時間を回復させることができる。補給所の行列に並んだ場合は、タイマーの時間を早く減少させることにすると、タイマーの時間回復のために列に並ぶことにより、タイマーの時間の減りを加速させてしまうというジレンマの構造を含むようになり、長い行列に人が殺到した結果余計なガソリンが消費される震災後のガソリンスタンドを模擬するようになる。実験結果からは、全く列ができなかった場合に比べてどれだけの損失があったかということを被験者全体の謝金合計額という形で明示的に示すことができ、モデルとの比較も行い易い。さらにこの損失額を提示して二度目の実験を行った際に、その情報によってどれだけ行列への殺到を防げるかも調べることができる。実際の人による実験が困難だった場合、コンピュータネットワークやロボットを利用した模擬実験を行う予定である。また可能であれば、上記実験において、パニックを抑えるスマートフォンアプリの効果の検証も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費:実験に使用するタイマー、アプリケーション実行用のタブレットPC、実験用のロボット、データ保存用のポータブルハードディスク、関連書籍などの購入を考えている。 旅費:二回の国際会議参加のための旅費、海外で短期間研究を行うための滞在費、国内学会参加のための旅費等の支出を考えている。 人件費・謝金:実験を行う際の謝金としての支出を考えている。 その他:国際会議、国内学会の参加費等の支出を考えている。
|