研究課題/領域番号 |
24760058
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
柳澤 大地 茨城大学, 理学部, 助教 (70611292)
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キーワード | 待ち行列 / 非対称単純排他過程 / セルオートマトン / ゲーム理論 / 群集運動 / 数理モデル / アプリケーション |
研究概要 |
【モデル】待ち行列への応用を念頭に、狭い道での群集の双方向流において、対面方向から来る人の避け方が統一される条件を調査した。その結果、個人の忘却率が低く、システムの人の密度が高いほど、頻繁に他人との接触があるため、避け方が統一され易いことが分かった。また、流量についても調べた。対面方向から人が来ない場合、進行を邪魔する人がいないので流量は大きくなり、対面方向から人が来るようになると避ける必要があるので流量が小さくなる。しかし、対面方向から来る人が少ないときよりも、多いときの方が流量が大きくなることが分かった。これは密度が高いときの方が、避け方が統一され易いからである。 待ち行列には、窓口でサービスを受けた後、窓口を通過するタイプの窓口と来た部分を引き返すタイプの窓口がある。引き返すタイプの窓口では、列に並んでいる人と逆向きに移動することになり、待ち行列で双方向流が発生する。また物資供給待ち行列では、サービスを受けた後の人は共有された物資を持っているため動き辛くなり、他人を避けるのが困難になる。そのため、上記の狭い道での群集の双方向流の研究は、待ち行列を整然と整え、スムーズに流れるようにすることに応用できる。さらに待ち行列が周囲の交通に及ぼす影響を調べる際にも活用することができる。 【シミュレータ】物資供給待ち行列システム3Dシミュレータを作成するための 3D プログラミングの技術を取得し、簡単な3Dシミュレータを作成することができた。 【学会発表】国内学会で1件のポスター発表と1件の口頭発表を行い、国際会議で2件の口頭発表を行った。国際会議の講究録に論文が4編掲載され、英文雑誌に論文が3編掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【モデルと理論解析】【研究実績の概要】に記載したように、平成25年度の研究により、物資を受け取った人が待ち行列を戻る際の影響を考慮することができるようになった。また3Dシミュレータの作成技術を習得したことにより、コンピュータを使った実験を行うことができるようにもなった。そのため、平成24年度の成果と合わせることにより、平成26年度に物資供給待ち行列モデルを完成させ、実験によりその実用性を検証することができると考えられる。 【学会発表・論文の出版】平成24年度と同様に、平成25年度も標準的な回数の学会発表、論文の出版を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
待ち行列への応用を想定した平成25年度の双方向流の研究、及び、平成24年度の研究で開発した周期系非対称単純排他過程における新たな指標を組み合わせることにより、現在、行列に殺到したことによって物資の保有量がどれだけ不均一になってしまうかということや、行列への殺到が起こらなければ失われなかった物資の総量を調べることができるモデルを構築中である。このモデルは交通流の基礎モデルにもなっている非対称単純排他過程を応用しているため、物資に殺到する車や人によって道が混雑してしまう状況も再現できると考えられる。このモデルの解析を詳細に行い、物資への殺到による物資の不足や道路の混雑を軽減する方策を導く。 また平成25年度は理論解析やシミュレーションに集中したので、平成26年度は予定していたタイマーを用いた実際の人による実験を行う予定である。タイマーの残時間を保有物資と考えることにより、長い行列に人が殺到した結果余計なガソリンが消費される震災後のガソリンスタンドを模擬した状況を作り出すことができる。そして理論解析・シミュレーションから得た方策を適用することにより、状況を改善できることを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の終わりに実験を行う予定であったが、理論解析・シミュレーションによる研究を先により一層進めた方がよいと判断し、平成25年度に行う予定だった実験を、平成26年度にまとめて行うことにしたため。 実験スタッフや実験参加者への謝礼で使用する予定である。
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